(C)Japan Space Systems

連載 「ドクター伊地智の宇宙ことはじめ」 第7回 究極のエコ発電所
宇宙太陽光発電システム(SSPS)

赤道上空36,000kmの静止軌道に置かれた大面積の太陽電池「宇宙太陽光発電システム」とは?その構想の内容を解説。ドクター伊地智の宇宙ことはじめ第7回。

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  • 赤道上空36,000kmの静止軌道に置く大面積の太陽電池「宇宙太陽光発電システム」
  • 1968年に提唱された、安定した電力発電の構想
  • 2020年代に技術実証完了、2045年に実用化を目指す

宇宙太陽光発電システムとは

ホモサピエンスは大脳の想像力により気宇壮大なことを企図し、実現し、発展して来た。古代エジプトのクフ王は人力で巨大なピラミッドを作り、チンギスハーンは馬に乗ってユーラシア大陸を征服して巨大な国家を作り、秦の始皇帝は万里の長城の建設を開始した。3000年前のホモサピエンスで既にそうであったのだから、宇宙に巨大な太陽電池板を設置し、現代社会や産業を支える「ベースロード電源」となりうる究極の環境に優しいエコ発電所、宇宙太陽光発電システム、を建設しようとすることは全く現代のホモサピエンスの性を考えれば合理的な帰結であると考えられる。

究極の環境にやさしいエコ発電所、宇宙太陽光発電システム(SSPS : Space Solar Power System)は、赤道上空36000kmの静止軌道に大面積の太陽電池を設置し、地球上の昼夜並びに気象条件に関わりなく、安定した電力を発電し、それをマイクロ波により地上に送電し、地上の既存の電力網に接続して安定した「ベースロード電源」としての発電所を目指すものである。

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太陽光発電イメージ図。赤道上空36000kmの静止軌道に大面積の太陽電池を設置する。実現すれば安定した電力を地球に送ることが出来るという(C)Japan Space Systems

化石燃料から太陽エネルギーの利用へ

人類(類人猿)が「火」の使用をはじめたのは約50万年前の、ホモサピエンスが世に現れるずっと前の原人の段階からといわれている。その後ホモサピエンスの世になりその大脳の想像力により食物の積極的な煮炊きから始まり、明かり、暖房、銅や鉄の製造等、様々に活用されて来たが、長いの人類(類人猿)の進化の中で、つい最近の18世紀半ばからの産業革命までは、そのために必要なエネルギーは植物の直接の燃焼によるもので、いわゆる「カーボンニュートラル」の状態が保たれてきた。

ホモサピエンスを含む全ての生物の活動の源は太陽から降り注ぐ太陽光によるエネルギーであり、しかもそれによる気象現象、及び宇宙空間に再放射される熱エネルギーがバランスを保ち、生物が快適に生存可能な温度範囲に地球は保たれている。化石燃料は数億年の単位にて植物や微生物が太陽光のエネルギーにより、大気中のCO2を固定化し地中に閉じ込めたものであり、その過程も環境バランスの形成に寄与した。少々壮大な言い方をすれば、数十億年の長い地球の歴史の中でほんの最近の産業革命以降、大量に化石燃料を消費しはじめてから環境のバランスに人為的な影響をあたえるようになったと言える。

そのことから、最近では化石燃料消費から、降り注ぐ太陽エネルギーの直接利用をはかるべく、太陽光発電が普及してきている。また従来の気象現象(太陽エネルギーに源を発する)、すなわち降雨現象の利用である水力発電も継続的に利用され、さらに同様に風力発電も普及しはじめているが、昼夜や気象条件の影響があり、また立地条件が限られるため、蓄電技術やネットワーク技術(スマートグリッド)の進歩があるとは言え、現代社会や産業を支える「ベースロード電源」とは、いまだなり得ていない。

2045年から実用化?

宇宙利用が始まったばかりの1968年にこの壮大な概念を提唱したのは米国の想像力豊かなPeter Glazer 氏で、オイルショックを契機として米国、欧州及び日本において実用研究が開始された。例えば、静止軌道上に2km四方の太陽電池板を設置し発電と同時にその裏側で5.8GHzのマイクロ波に変換して地上へ送り、地上では直径4kmのレクテナ(マイクロ波を直流に変換するアンテナと整流器を一体としてもの)を設置したものでほぼ現在の火力発電所や原子力発電所と同じ100万kWの安定した電力を地上の電力網に供給出来る。

SSPSの送電に使用されるのはマイクロ波である。このマイクロ波は、生物の細胞のDNAに損傷を与える、いわゆる電離放射線ではない。携帯電話や電子レンジ等に用いられる電波と同じである。現在検討されているSSPSでは、地上へ電力を送る5.8GHzの電波の強度は、ビームの中心部分では約100mW/cm2とされている。これは地上へ降り注ぐ太陽光のエネルギー密度約137mW/cm2と比較してほぼ同程度であり、適切な立入禁止区域を設定することで、安全は確保可能であり、また仮に動物や鳥が侵入したとしてもただちに影響を及ぼすレベルでは無い。

この発電所の実現に向けての大筋の流れとしては、2020年代のうちに地上での技術実証を終え、宇宙実証への移行について判断し、その後宇宙での技術実証を行いながら、社会的な必要性やシステムの経済性との整合性も踏まえて、2045年頃からの実用化を目指しているが、さてさて...。

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