連載 「ドクター伊地智の宇宙ことはじめ」 第4回
人工衛星の電化!?

オール電化衛星のコスト削減効果で、ビジネスが加速する可能性も?ドクター伊地智の宇宙ことはじめ連載第4弾。

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  • 人類が電気を使うようになったのはごく最近のこと
  • 「オール電化衛星」はコスト削減効果も期待
  • 技術試験衛星ETS-9は電気推進器を利用したものとして開発中

ヒトが電気を手に入れるまで

最近オール電化衛星なるものが業界の中、特に静止通信衛星で話題になり始めている。現代においてはほとんど全ての製品が電気を利用することから、「電化」という言葉は死語となり、21世紀に生まれた若者はご存じないかと思います。

いわゆる電気、エレキ、又は電子や正孔、電荷の「流れ」またはそれらによる「電位/電場」は、自然界には常に存在し自然界の現象のみならず生物の営みや生きることに細胞レベルの現象から深く関わっている。しかし、ホモサピエンスの大脳がそのことを知り、それを利用し始めたのはホモサピエンスの歴史の中ではほんにごく最近のことである。有史以前から目撃し、恐れたのは「カミナリ」であり利用したのは静電気でくっつくことであろう。科学史の立場で言えば17世紀から18世紀にかけて、例えばアメリカのベンジャミン・フランクリンが、無謀にも凧でカミナリの電気を拾いライデンビンに貯めて電気であることを証明し、イタリアのアレサンドロ・ボルタが硫酸に電極を入れて始めて電池を作り、電気を作った歴史があり、この時代頃からホモサピエンスの道具の一つとなり始めた。

電気利用は、電灯から衛星まで

家庭での電気の利用は行灯やローソクに替わる安全な「電灯」から始まった。これにより世の中は暗闇から解放された。このインパクトは「電気をつける」という言葉が電灯のスイッチを入れる言葉として常用されていることからも判る。今も残る旧家の電気の配線を見ていただければ判るが、まさに電灯を賄う容量の配線とヒューズしか付いていない。ちなみに次に家庭で電気を使ったものは、よく映画やTVの番組での終戦の玉音放送を聞く場面に登場するラジオであろう。

前置きが長くなったが、戦後の昭和30年代から「家庭の電化」が産業政策の面からも推進されたが、それは家庭の主婦の炊事洗濯掃除等の労力を電気で軽減することであった。すなわち「お釜・盥(たらい)・箒・叩き」から、「電気炊飯器・電気洗濯機・電気掃除機」への転換である。そのなごりは町の古い電気屋さんの看板に「電化センター」なる表記が残っていることである。

それから余談ではあるが、一昔前の電力会社がはやらせようとした「オール電化」なるものがあるが、それはエアコン(ヒートポンプ)による暖房、夜間電力利用による給湯、さらには老人でも安全なIHの普及等による脱石油・脱ガスであった。

電気推進器を利用するオール電化衛星

さて、「オール電化衛星」とは何かと言えば、全ての推進器として電気推進器を利用している衛星のことである。宇宙空間において推進力を得るには物体を噴射することによる反作用による。その噴射は、化学推進ではタンクに入れた化学物質を分解又は同じくタンクに入れた酸化剤と反応させ、その分解・燃焼エネルギーによって噴射する。電気推進では太陽電池パネルからの電力エネルギーを利用し、気体を電離し、さらに電圧又は電磁力により加速させて行う。これにより「オール電化衛星」では推薬タンクが小さくて済み、燃料等を含めて相当な重量が節約出来る。静止通信衛星の場合は、その通信機器等の通信衛星ビジネスに必要な重量の打上げ時の全重量に対する比率が、化学推進では20%なのに対して40%程度に増やせると期待され、通信衛星ビジネスの低コスト化に貢献し始めている。

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静止軌道投入、姿勢軌道制御に化学推進系ではなく、電気推進系を使用する技術試験衛星ETS-9。h2ロケット2号機で打ち上げられる予定だ(C)三菱電機

ところで「オール電化衛星」という言葉を日本で言い出したのはやはり1960年代の電気炊飯器の普及を経験している方々であろう。今の若者だともっと違う日本語のネーミングをしたかもしれない。ちなみに英語での呼び方は "All Electric Propulsion Satellite"又は"All Electric Satellite"であるようで、少し語感が異なる。

欧米は先行してマーケットへ投入されているが、日本でも技術試験衛星ETS-9で実証するべく開発が開始されている。

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