連載 「ドクター伊地智の宇宙ことはじめ」 第1回 
日米、宇宙で最初のランデブー
SFUプロジェクト

そのロマンチックな響きの「ランデブー」は宇宙の専門用語としても知られる。今やHTV補給技術にも展開されるその技術の初期について伊地智博士が解説する。

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  • ロマンチックな響きを持つ、宇宙の専門用語「ランデブー」
  • ランデブーは14の変数を制御する高度な技術
  • SFUの把持が、HTV(こうのとり)の宇宙ステーションへの補給技術へ

宇宙徒然ことはじめ

生物の進化の一過程としてホモサピエンスがこの世に出現して600万年といわれ、日本に縄文人が定着して10万年といわれ、人間の本性(H/W)についてはその時に形作られ、それ以降は本質的な進化はしていない。テクノロジーの進歩はそろそろこの人類の本性の手に余るものとなるのかとの危惧はあるものの、概して人間の基本的な営み、すなわち社会的な繋がりの中で、生まれ、食べ、成長し、争い、人を愛し、家族を構成し、老いて死に到るという人類共通の本性に進化論的な変化をもたらしてはいない。故に僅か約700年昔の好き者の文化人の視点とノリにて最先端(...?)の宇宙について徒然なるままに書き下すことも満更見当違いとは思われず、またいとおかしかるべしと思い、まずは始めてみることとした。

ロマンチックな響きを持つ、宇宙の専門用語「ランデブー」

ランデブーとは日本語ではロマンティックなひびきとともに恋人同士の密会となっているが、辞書をひもとくとフランス語で、"a meeting at an appointed place and time"の意となっており、宇宙での二機の宇宙機が一緒になるための条件が意味の中に含まれており、なるほど用語として使われたことに納得が行く。今では宇宙の専門用語としても定着している。

さてどういうわけかあまり知られていないが、1995年3月にH-II-3号機にて打ち上げられ、1996年1月にスペースシャトル72号により回収され、日本で初めて地上に帰還した宇宙機(「機」と記されるところがミソ)としてスペースフライヤーユニット(SFU)というプロジェクトが有った。これは当時の三省庁合同プロジェクトでNASAのスペースシャトルを回収に利用するというプロジェクトで、多様な目的に利用可能な多目的宇宙プラットフォームのインフラとしての実現するのが目的であった。初号機(もっとも2号機のフライトは実現せず、初号機は上野の科学博物館地球館の2階に展示されている)は科学観測有り、宇宙工場の予備実験有り、さらには建設中の宇宙ステーションの機器の予備実験を行う等、多彩なミッション機器を搭載して約10ヶ月にわたり軌道上にて様々な運用を行い、地上に帰還した。当財団も当時の通産省の実行機関としてその開発と運用の役割を果たした。

帰還に際してはスペースシャトルのロボットアームにて掴んで収納してもらう必要があるが、そのためには約8ヶ月後に別の場所から打ち上げられたスペースシャトルと宇宙で「ランデブー」する必要がある。

SFU_ueno.png

SFU初号機は上野科学博物館に展示されている

ランデブーは14の変数を制御する高度な技術

...というと簡単なように思えるが、人が地面の上を歩いて目的地に行ったり、飛行機が空気を利用して行きたいところに飛行するのとは異なり、ほぼ厳密にニュートンの物理法則に従って別の軌道を飛行している二つの宇宙機をどのようにしてロボットアームで捕獲してもらえるように近づけられるかという「技術的な課題」である。すなわち双方の位置と速度(3次元の6変数)と時間変数二つ、双方合わせて合計14の変数をどのように制御すれば双方に搭載可能な燃料の範囲内と時間的な制約の中で現実的に可能かという問題を解くという課題である。

結論を言えば、スペースシャトルとして現実的に回収が可能な軌道上の空間(縦、横、高さ)を指定してもらい、その空間(コントロールボックスと呼ぶ)の中に指定された時間の範囲内でSFUが入れば回収出来るという方法が用いられる。

細かくなるが具体的に説明すれば、SFUは回収してもらうスペースシャトルが無事に打ち上がったことを確認後の5時間後に運用している高度482kmの位相回帰軌道(毎日地上の同じ点を通過する軌道)より高度315kmの回収軌道に自分の燃料を使用して降下し、スペースシャトル打上げ後の49時間後に双方が図に示す宇宙における仮想空間内に入る(Rendezvous)ということだ。その後はスペースシャトルがSFUに近づき(Proximity Operation)、ロボットアームでSFUの把持(Grapple)し、貨物室に収納する。

SFUシャトル.png

スペースシャトルに把持されるSFU (C)JAXA

SFUの把持が、HTV(こうのとり)の宇宙ステーションへの補給技術へ

一方現実は、スペースシャトル72号はあまりにも荷物が少なく、他の仕事も少なかったのか燃料はあり余る程あり、全てスペースシャトル側による軌道制御のみでSFUの運用高度まで来てランデブーと回収が完了した。いわば彼女は一歩も動くことなく、彼氏の方に一方的に近づいて来てもらったようなものであった。ちなみにスペースシャトルのロボットアームを操作してSFUを捕獲把持したのは若田宇宙飛行士であった。

しかしその「宇宙でのランデブーを行う」という課題解決の過程で日本は学び、技術を確立したのである。その後この技術は次世代型無人宇宙実験システム(USERS)のピンポイントの帰還技術の確立を経て、HTV(こうのとり)の宇宙ステーションへの補給技術へ応用されて行った。HTVでは宇宙ステーションとランデブーをHTV側で行った後、宇宙ステーションのロボットアームで捕獲され、ドッキングポートに結合される。

ピンポイントの帰還技術と、ランデブーとドッキング技術はなぜ同じかについては宇宙徒然(その2)にてつぶやくこととする。

(文責:伊地智幸一)

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