連載 「ハイパースペクトルセンサHISUI」 第7回 
効率的に水稲の生育診断をしたい

スペクトルを切れ間なく観測する驚異のセンサHISUI

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 水稲栽培における窒素の不足は、生育不良や収量の低下をもたらします。一方で、過剰な窒素は倒伏やいもち病、さらには米の品質低下の原因となるタンパク質含有量の増加を引き起こします。そのため水稲栽培では、生育の途中で稲の窒素栄養状態を知るための生育診断を行い、診断結果をもとに施肥の量や時期を決めています。
 これまで、葉色カラースケールを用いた葉色診断方法や、簡易型透過光計測機器(SPAD)を用いた方法が生育診断の方法として広く普及してきました。しかし、これらの手法で得られるのは局所的なデータなので、広域の圃場に適用すると場所によって精度にばらつきが出ます。そのため、広域圃場を対象にした効率的かつ安定した精度が得られる生育診断手法の開発が求められています。

現在の研究実績

 本事例では、酒田市と大崎市の水稲を対象に、効率的な生育状況の把握を目的として、一般化正規化分光指数(NDSI)および既往植生指数を用いた玄米粗タンパク含有率の推定手法を開発しました。使用したデータは、航空機ハイパースペクトルセンサAISAと携帯型ハイパースペクトルセンサFieldSpecで観測したデータです。
 まず、それぞれの対象地で取得したデータを用いて、波長の全組み合わせでNDSIを計算しました。これらのNDSIを用いて、実測した玄米粗タンパク含有率を推定する回帰式を作成し、回帰式の決定係数R2のコンターマップを作成しました。

水稲 コンター.jpg

 次に、AISAのデータを用いて、広域の玄米粗タンパク含有率を推定する方法を検討しました。コンターマップで決定係数の高い波長の組み合わせが複数あったため、特に玄米粗タンパク含有率の推定に適した波長を選ぶ必要があります。そこで、既往研究で得られている複数の植生指数を使って検証を行いました。その結果、Modified NDVI(以下、mNDVI)に用いる波長の組み合わせで決定係数が高くなることが分かりました。
 酒田を観測したAISAのデータからmNDVIを計算し、玄米粗タンパク含有率(Pr)の推定式を求めた結果、Pr(%)=27.8×mNDVI-9.25 が得られました。この推定式から玄米粗タンパク含有率推定図を作成し、現地の状況と概ね一致した結果が得られていることが確認できました。このような詳細なコンターマップを用いた波長の抽出は、高波長分解能かつ連続的なデータであるハイパースペクトルデータを使うことで可能になります。

水稲 反射スペクトル.jpg


期待される活用方法

<収量の正確な把握>

 水稲は、日本を含むアジアにおいて主要な農業生産物です。水稲の生産には米の品質と収量の管理が不可欠です。本事例の結果は、広域での品質の把握に繋がると考えられ、生育状況の把握や、農地の管理への活用が期待されます。またハイパースペクトルデータを使うことで、米の品種を分類できる可能性があることから、植えられた品種が管理されていない、アジア諸国の水稲農業においても、効率的な生育診断が可能になることが期待されます。

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