連載 「ハイパースペクトルセンサHISUI」 第4回 
海域にある石油探鉱候補地を探したい

スペクトルを切れ間なく観測する驚異のセンサHISUI

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 衛星画像データ、特に合成開口レーダによるオイルスリック・マッピングは、海域における石油探鉱の一手段として定着しつつあります。しかし、実利用が進むにつれて、探鉱現場からはオイルスリックの分布や位置だけではなく、自然滲出油とそれ以外のスリックの区別や滲出点の特定について、より精度の高い情報提供が求められています。
 一方で、石油資源の探鉱開発では環境への配慮が重要視されており、掘削リグや船舶からの廃油などによる環境汚染への対策が必要となります。海に広がる油膜の把握を海岸や船舶などから行うことは容易ではありません。海洋汚染対策の手段としてもオイルスリックのモニタリング技術の開発が望まれます。

現在の研究実績

 既存の研究から、油膜の連続スペクトルは可視から短波長域において変化することが知られています。そこで本事例では、ハイパースペクトルデータから得られる油膜のスペクトル特徴を使ったオイルスリック・マッピング手法を検討しました。
 対象地であるサンタバーバラ沖では自然滲出油によるオイルスリックの存在が知られており、航空機ハイパースペクトルセンサAVIRISによる観測が複数回行われています。本事例では、この観測データを使用しました。
 マッピングでは、まず、AVIRISデータのカラー合成画像を目視で判読して、オイルスリックと通常の海表面の領域を抽出しました。抽出した両者の輝度値を比較すると、オイルスリックは通常海面よりも高い輝度値を示しました。また、オイルスリックの輝度値パターンを見ると、滲出点近くでは放射輝度が相対的に小さく、その後、急激に放射輝度が増大
し、さらに滲出点から離れるにつれて450nm~560nm(青~緑の波長帯)の放射輝度が漸減することがわかりました。このようなスペクトルパターンの確認は、ハイパースペクトルだからできることといえます。
 この滲出点からの距離とオイルスリックのスペクトルパターンの関連性に着目して、オイルスリックの中で可視域の輝度値が最大となる範囲(450nm~560nm付近)を教師としたSAM法を用いて、スペクトル角の変化を算出しました。SAM法のスペクトル角は、滲出点付近では比較的大きな値となりますが、滲出点から離れると急激に小さな値となり、その後、スペクトル角は徐々に大きくなることが分かりました。このパターンに着目すると、オイルスリックの両端についてスペクトル角を調べ、急激に小さくなる方が滲出点であると推定できます。

滲出位置.jpgAVIRIS.jpg期待される活用方法

<海域における新規油田の探鉱>
 衛星画像データを用いるオイルスリック・マッピングでは、主に合成開口レーダのデータを利用して解析します。しかし、海域によっては利用可能なデータが限られることや、判読されたオイルスリックの再現性が得られないことがあります。このような場合に、ハイパースペクトルデータから得られるオイルスリックのスペクトル構造の情報は、海域の石油探鉱において貴重な情報となり得ます。例えば、この情報を活用することで、日本資本の石油開発会社が、アフリカ沖やインド洋等のフロンティア海域で欧米のメジャーに先駆けて新規海底油田を発見することが期待されます。

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