連載 「ハイパースペクトルセンサHISUI」 第18回 
沿岸部の水深を把握したい

スペクトルを切れ間なく観測する驚異のセンサHISUI

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 広範囲の沿岸部の水深の情報は、船舶の安全航行や領海警備にとって重要な要素です。しかし、現在水深のデータが整備されているのは主要な港湾に限られています。
 広域の水深データを取得する方法として、マルチスペクトルの光学衛星画像を用いる方法が研究されてきました。マルチスペクトル画像を用いて水深を求める一般的な方法は、水中の光の減衰と水深の関係を指数関数で表現できることに基づいています。しかし、この方法は底質が砂以外の海草や海藻などで覆われている箇所では誤差が大きくなり、水深を連続的に取得することができません。また、対象海域毎に関係式を求めるための現地調査が必要となり、他の海域への適用が難しいという課題があります。そのため、効率的に広範囲の水深を取得できる方法が求められています。

現在の研究実績

 本事例では、多くの現地調査データを必要とせず、ハイパースペクトルデータから水深を求めることができる実用的な手法を検討しました。ハイパースペクトルデータから得られる反射率と、放射伝達理論に基づいてシミュレーションした反射率のスペクトルマッチングによって水深,底質反射率,水の吸収・散乱特性を同時に求めることができるInversion法と呼ばれる方法の中でも、拡張性の高いSemi-analyticalモデルを採用しました。
 Inversion法はスペクトル上のノイズに大きく影響を受けるため、ハイパースペクトルデータに対し、大気補正と水面反射補正を行います。その補正したデータを用いて、底質を分類してから水深を求めます。底質分類には、植物プランクトンの影響を受けにくい500nmと550nmのバンドを用いました。
 Semi-analyticalモデルは、センサが観測する水面直上の反射率を、植物プランクトン色素の吸収係数、有色溶存有機物の吸収係数、懸濁粒子の後方散乱係数、底質反射率係数、水深の5つの未知数の関数で表します。底質反射率係数以外の係数は、既往文献に掲載されている一般的な数値を用いることで水深推定が可能です。底質反射率係数は、底質分類結果から求めます。
 これらの係数を使って水深を推定し、水深分布図を作成しました。市販の水深データから作成した水深分布図と比較したところ、分布傾向は概ね一致しました。また、精度検証の結果、阿嘉島では水深20m(RMSE(Root Mean Squared Error):2.7m)程度まで推定できることがわかりました。

水深.jpg

期待される活用方法

<沿岸部における様々な取り組みの基礎情報として活用>
 ハイパースペクトルデータによる水深分布図は、コストやアクセス、更新頻度の問題により既存の水深情報では十分でない場所での活用が考えられます。例えば、海図更新箇所を選定するための事前調査への利用や、瓦礫や養殖筏、サンゴ礁などで測量船が入れない内港湾や商港湾への利用、津波シミュレーションへの利用など、安全保障や漁業、海洋エネルギー開発、海岸保全など様々な分野での活用が期待されます。

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