連載 「ハイパースペクトルセンサHISUI」 第17回 
サンゴの白化および白化からの回復を把握したい

スペクトルを切れ間なく観測する驚異のセンサHISUI

この記事は、約4分で読めます。

 サンゴ礁は、観光や漁業などで地域経済を支えるとともに、生物多様性の維持のためにも重要な役割を担っています。しかし、気候変動による海水温度の上昇に伴い、サンゴの白化現象が世界各地で急激に進んでいます。白化現象は、サンゴに共生している褐虫藻がサンゴの組織内から放出されることで起こります。これが長く続くと、サンゴは褐虫藻から栄養を得られなくなり、サンゴの死滅につながります。白化後の状況(回復または死滅)を把握することは、地域経済や生物多様性維持のためにも非常に重要です。
 サンゴ礁の調査は、調査員が現地に行き、サンゴ礁の被度、種類、群体数など多数の項目を目視で確認する方法で行われています。しかし、この調査方法では、多くの時間とコストがかかるだけでなく、調査範囲も限られてしまいます。さらに、目視観察という主観的な方法であるため、調査員による調査結果の違いが発生する可能性があります。
 そこで、客観的に広範囲のサンゴ礁の状況を把握するために、衛星リモートセンシングの利用が検討されてきました。これまでも、マルチスペクトルデータがサンゴ礁の分布調査に使われてきました。しかし、褐虫藻が共生している生きたサンゴ(生サンゴ)と、死滅した後に藻類で覆われたサンゴ(死サンゴ)のスペクトルの特徴がよく似ているため分類は困難でした。そこで両者を分類する手法が望まれます。

現在の研究実績

 本事例では、底質指標画像と一次微分画像を使って、生サンゴと死サンゴを分類しました。
 はじめに水深の影響を受けにくい底質指標を使い、ハイパースペクトルデータから底質指標画像を作成しました。作成した底質指標画像に対し、現地調査データを教師とした教師付き分類を行い、「海草」、「生サンゴ・海藻・岩」、「死サンゴ・礫」、「砂」の4つのカテゴリに分類しました。
 次に、一次微分画像を使って、「生サンゴ・海藻・岩」のカテゴリから、生サンゴを抽出しました。一次微分処理は波長を連続的に観測しているハイパースペクトルデータだからこそ可能な手法です。この処理を行うことで、対象物のスペクトルの特徴を利用した詳細な分類ができるようになります。サンゴのスペクトルの特徴は、515nm~575nmのバンドによく現れるので、その波長帯の一次微分画像に対し、教師付き分類を行いました。ただし、水によるスペクトルの吸収の影響を受けるため、深い海の領域を除いて分類しています。
 底質指標画像と一次微分画像から作成した分類図を統合することで、「海草」、「生サンゴ」、「海藻」、「岩」、「死サンゴ・礫」、「砂」、「深海」の7つのカテゴリに分類できました。分類図を現地調査データと比較したところ、正答率は70%でした。さらにサンゴだけでなく、海草と海藻類の分類に対する有効性も示されました。

サンゴ.jpg

期待される活用方法

<サンゴ礁モニタリングへの情報提供>
 ハイパースペクトルデータを使うと、生サンゴと死サンゴのわずかなスペクトルの違いを捉えることができるので、これらの分類が可能となります。得られた分類結果は、広範囲のサンゴ礁モニタリングに活用でき、さらにサンゴの保全にも役立てられると期待されます。また、海草と海藻類を分類できたことから、サンゴ礁に限らず、全国の沿岸環境モニタリングへの活用も期待されます。

月に一度、宇宙開発や宇宙ビジネスに関する
最新ニュースをお届けします。

※宇宙ビジネスコートの無料会員登録フォームへリンクします。

Go to page top