連載 「ハイパースペクトルセンサHISUI」 第13回 
泥炭湿地林の森林劣化箇所を知りたい

スペクトルを切れ間なく観測する驚異のセンサHISUI

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 泥炭とは、枯れた植物が分解されず、数千年にわたって堆積することによって形成された有機質土壌のことです。この有機質土壌は、植物のバイオマスを大量に蓄えています。そのため、環境の変化によって燃えたり分解されたりすると、炭素が二酸化炭素(CO2)となって大気中に放出されます。この泥炭の上に構成された森林が泥炭湿地林です。泥炭湿地林が減少したり劣化したりすると、樹木と土壌の両方からCO2 が排出されます。
 インドネシアでは、2015 年に泥炭湿地林で大規模な火災が発生し、9月から10月の2ヶ月間のCO2排出量は、米国の年間排出量を上回りました(World Resources Institute,2015)。CO2 は、地球温暖化の原因物質です。そのため、泥炭湿地林が排出する大量のCO2 を抑制することは、地球温暖化を防止する上で重要な取り組みといえます。この取り組みの一環として、現在の泥炭湿地林のバイオマスや生育状況などの把握が求められています。

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現在の研究実績

 中央カリマンタン州の泥炭湿地林における森林減少及び劣化の主要な原因は、森林火災です。現地調査の結果、森林のタイプは、火災等による森林劣化が生じていない一次林と、火災後の遷移過程の森林である二次林に区分できることがわかりました。一次林と二次林ではバイオマスが大きく異なります。
 本事例では、ハイパースペクトルデータと、林冠の凹凸に起因するテクスチャデータをもとに、LASSO 回帰分析を使ってバイオマス推定マップを作成しました。その結果、現地調査結果と推定マップは90%以上一致しました。この推定マップに閾値(180t/ha)を設定し、閾値よりもバイオマスが多い箇所を一次林、少ない箇所を二次林として、現地の状況とおおよそ対応した一次林/ 二次林分類マップを作成しました。これらのマップを使うことで、森林の劣化が起こっている箇所がわかり、泥炭湿地林のバイオマスを効率的に評価できます。今後は、ハイパースペクトルデータを使った地下部の泥炭量の評価や地下水位モニタリングへの適用を目指します。

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期待される活用方法

<REDD+や二国間クレジット制度に関連したプロジェクトへの活用>
 REDD+とは「Reducingemission from Deforestation and Forest degradation and Plus」の略で、途上国における森林減少・劣化の抑制や持続可能な森林経営などによって温室効果ガス排出量を削減あるいは吸収量を増大させる努力にインセンティブを与える気候変動対策のことです。
 また、二国間クレジット制度とは、途上国での対策実施を通じ、実現した温室効果ガスの排出削減・吸収への各国の貢献を定量的に評価し、各国の削減目標の達成に活用する制度のことです。
 世界では、REDD+ や二国間クレジット制度など、CO2 排出量を削減することによって、経済的な利益を得ることが可能な取り組みが進められています。
 インドネシアでは、泥炭地の保全・修復によって減らせるCO2 排出量が5.66 億tCO2/年になると予想されています。クレジット価格を5$/tCO2 と仮定すると、28.3 億$/年に相当する市場が生まれます。この市場を開拓するためには、CO2 排出量の計算に欠かせない、泥炭湿地林のバイオマスの評価が必要であるため、より正確にバイオマスの評価ができるハイパースペクトルデータに期待が寄せられています。

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