連載 「欧州宇宙ビジネス最前線」 Toulouse Space Show 2018  第二弾

Toulouse Space Showに様々な分野のラウンドテーブルが開催され、本記事では、第一弾に続き、宇宙政策から最新技術などが話し合われた本会議の様子を紹介する。

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  • 宇宙ビジネスは、新しい付加価値サービスを創出し、経済機会を提供する魅力的な分野として欧州で注目を集めている。
  • 自動運転に関しては、地上センサー導入がコスト的に難しい過疎地域等のエリアでは衛星技術が必須であることを確認した。
  • 世界の地球観測分野における官民連携の重要性および衛星データのアクセス性向上はビジネスチャンスを創出した。

Space Economy

Space Economyセッションでは、世界の宇宙利用開発の中で起きている技術革新と今後の動向が議論された。

基調講演はAIを利用したデータサービスを提供しているQuantCube社のThanh-Long HUYNH氏(最高経営責任者)により行われた。大規模な非構造化データに基づくリアルタイム予測分析を専門としており、衛星データがどのように経済分析に貢献しているのか発表された。 テクノロジー、データサイエンス、ビジネス専門知識の組み合わせにより、短期、中期および長期の景気先行指数にわたる複数分野のアプリケーション向けに、世界中の主要機関や企業に予測ソリューションを提供する。マイクロサテライトとディープラーニングを駆使し、以前では知り得なかった情報を引き出すことができる。例えば、ホテルの窓から漏れる光を分析し、占有率を計算することによって、都市における短期的な経済発展の指標とすることができる。 新技術、インフラ、サービスを統合的に開発することにより、「宇宙」は多くの分野で経済発展の原動力となっている。また、新しい付加価値サービス、民間投資、強力なエコシステム、新規企業の参入などの要因により、魅力的な経済機会とアプローチを提供する分野として注目を集めていた。

Autonomous Mobility

Autonomous Mobilityセッションでは、航空宇宙から自動車分野における自動運転に、宇宙技術がどのように活用され、社会に与える影響や国民生活の変化について議論された。

欧州委員会のAndrea GENTILI氏(研究・イノベーション総局 航空課 課長補佐)は、自動化に関して「この世には2つの仕事しか残らないだろう。それぞれの仕事は犬と人間に割り振られる。人は犬にえさを与え、犬は自動化された機械を人間に触れさせない役目を担う」と述べた。もちろんこれは極論ではあるが、この言葉には人間と機械の共存の重要性が秘められているのだと語り、場を沸かせた。

本セッションにて、ハイライトとなったのは自動運転の中で担う衛星の役割だ。地上センサーが設置しやすい大都市では、自動運転における衛星の必要性が低いのではないか、一方で、大都市以外の人口が少ない過疎地域などでは地上センサー導入はコスト的に難しく、衛星技術が必須であり、都市部でも冗長性という観点から必要不可欠であるという議論が繰り広げられた。また、自動運転分野での新しい仕組みづくりにも触れ、駐車場で眠ったまま一日の7~8割方使用されない車両の有効活用と乗車数の削減が、渋滞緩和などの社会問題解決の糸口となるのではないかという議論で、セッションは幕を閉じた。

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Autonomous Mobilityセッションのパネル。

Earth Observation Revolution

Earth Observation Revolutionセッションでは、世界の地球観測分野における官民連携の重要性と欧州のデータ統合・解析システム(DIAS)の登場による、衛星データのアクセス性向上に起因した宇宙産業の促進についての議論が行われた。

基調講演を行った欧州委員会のPhilip BRUNET氏(域内市場・産業・起業・中小企業総局 宇宙政策局長 コペルニクス・防衛)は、一週間前にプロジェクト発足20周年を祝ったコペルニクスプログラムについて、「着実にプログラムは進化しており、DIASサービスの開始により、さらに多くの人々の手に届くことになるだろう」と話した上で、DIASプログラムを「宇宙分野における近年最大のイノベーション」と話し、さらには宇宙産業における今後の川下産業の重要性を主張した。

ラウンドテーブルでは、データ解析の重要性が言及された。地球観測データだけには価値はなく、それを解析することによってはじめて付加価値が生まれ、商用利用にいたる。衛星を打ち上げるだけではエンドユーザーに利益還元はできず、収益化も図れないため、ユーザー中心のサービス創出に対する重要性が強調された。さらに、話題は資金調達に移り、ベンチャーキャピタリストからの当分野に対する注目度に関する質問がモデレーターから挙げられ、米国発のスタートアップ企業でありスタートアップ環境に詳しいSpire社のTheresa CONDOR氏(経営企画部長)は初期投資が高額になりがちな宇宙分野においても、投資家は依然として興味を持っており、いいアイデアさえあれば、投資を募ることは可能であると答えた。

「ここ10年以内に1時間以内の衛星画像が手に入るようになる」とAirbus Defense and Space社のFrancois GAULLIER氏(衛星製品ライン担当 テレコミュニケーション主任)が自信をもって主張したように、宇宙分野における技術革新は目まぐるしいスピードで起きており、その好機を掴むのは人間の想像力である。衛星データを利用し、大気汚染や植生に関するデータだけでなく船舶の航路選定に貢献するデータや国家の経済状況などもわかるようになったのは、紛れもなく人間の知恵の産物である。宇宙産業における「ムーアの法則」は、消費者ニーズに応えるためのシーズが大量に創出されていることを示し、この好機を活かした今後の宇宙産業の拡大とさらなる進化から目が離せない。

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