連載 「欧州宇宙ビジネス最前線」 Toulouse Space Show 2018  第三弾

Toulouse Space Showに様々な分野のラウンドテーブルが開催され、本記事では、第二弾に続き、宇宙政策から最新技術などが話し合われた本会議の様子を紹介する。

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  • 小型衛星コンステレーションとそのコスト抑制におけるインダストリー4.0の役割、人と先進技術の共存およびサイバーセキュリティ対策の議論が行われた。
  • 5Gの導入は強化されたモバイルブロードバンド、信頼性の高い超低遅延通信、大規模なマシンタイプコミュニケーションによる電気通信サービスのエコシステム発展をもたらす。

Industry of the Future: Already a Reality?

Industry of the Future: Already a Reality? セッションでは、小型衛星コンステレーションとそのコスト抑制におけるインダストリー4.0の役割、人と先進技術の共存およびサイバーセキュリティ対策について議論された。

日本ではソフトバンクグループが出資したことで話題になった小型衛星約900基体制のOneWebなど、小型衛星の大規模コンステレーションが市場のスタンダードとなっていくと、衛星のコストがネックとなる。コスト抑制ため、スマートファクトリー技術を応用し、自動化を行い、大量生産を図らなければならない。このような技術を応用すると、1日に約2~3基の生産が見込める。まさにそのスマートファクトリー技術をOneWebに提供しているLatesys社は2018年4月に東京事務所を開設し、日本進出にむけて本格始動している。同社は航空宇宙産業に特化した高い専門性を武器に他社との差別化を図っている。

この様な技術の応用は必須であり、その中でもヒューマンセントリックな仕組みづくりは極めて重要である。人と先進テクノロジーの共存のための人材育成も同時並行的に行わなければならないとの意見が多数挙がり、この時代の変化は人間に高付加価値の職を、その他の職をロボットに振り分ける「好機」であるのだと強調された。さらに、この様なシステムの導入において、サイバーセキュリティ対策は最も重要なテーマの一つであり、多額の投資を要するけれども、サイバー攻撃そのものがもたらす恐れのある損失額の方がはるかに上回るため、決して手を抜いてはいけない分野であるとの議論があった。近年ランサムウェア攻撃などを通じたデータ漏洩がメディアで話題となっており、セッション参加企業(タレス、アリアングループ、コンチネンタル、エアバス等)のサイバーセキュリティ対策への優先順位の高さが窺えた。当セッションで引用されていたGlobal Digital Operation Study (PwC 2018調査報告書)の統計によると、製造業におけるDigital Champion (=高度デジタル化企業)は世界企業の10%にしか及ばない中、アジア太平洋地域では19%の製造業者がDigital Championのステータスを獲得しており、アジア太平洋地域がデジタル化を牽引しているとの調査結果が発表されている。北南米地域では11%、欧州・中東・アフリカ地域では5%にとどまっており、その差が浮き彫りになっている。同調査結果の試算によるとアジア太平洋地域のデジタル収入における成長率は17%であり、欧州・中東・アフリカ地域の13%を大きく上回り、インダストリー4.0に含まれるエンドツーエンドのデジタル化、バリューチェーン上のデータ統合など今後の成長率や競争力向上のためのデジタル分野における投資の重要性を再確認したセッションとなった。

The Advent of the 5G

The Advent of the 5Gセッションは、強化されたモバイルブロードバンド、信頼性の高い超低遅延通信、大規模なマシンタイプコミュニケーションによる電気通信サービスのエコシステムの発展における5Gの新たな第一歩について話し合われた。欧州宇宙機関(European Space Agency - ESA)は5Gインターネットに積極的に取り組んでおり、2017年に16社の欧州宇宙企業と共同で衛星ベースの5Gインターネットを実証した。さらに8社が2018年6月までにこのイニシアチブに参加した。

現在の第4世代移動通信システム(4G)は今後2~3年で飽和し、モバイルデータは現在毎年60%増加している。 結果として、アンテナを追加する、もしくは、5Gを導入するなどの対策を要している。5Gの導入は、超低遅延通信を必要とする自動運転車など、多くの新しいアプリケーションで重要性が言及された。

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The Advent of the 5Gセッションのパネル。

Space Ecology

Space Ecologyセッションでは、宇宙空間、革新技術とガイドラインを主なテーマに議論がなされた。「New Space」が次から次へと発展を遂げ、あらたなビジネスの機会も数多く生まれている中、各国のガイドラインは追いついているのか。また、宇宙のプレイヤーはそのガイドラインに沿って活動をしているか。強力な国際協力の上に構築されたガイドラインを超えて、政府機関の主導的役割と宇宙産業界からの参入を増加させることの重要さが強調された。

新たな宇宙ビジネスで注目を浴びているのが、オランダのスタートアップ企業であるInnovative Solutions In Space (ISIS)だ。彼らは、プレゼンの冒頭、「衛星の旅行会社」であると自身の宇宙ビジネスを紹介した。オランダにあるデルフト工科大学のDelfi-C3小型衛星プロジェクトからスピンオフし、2006年に会社を設立後、急速な成長を遂げ、スタートアップの域を超え、小型衛星市場における大手企業の一つとなった。ISISは、最新の革新的な技術を利用してコスト効果の高い空間ソリューションを提供することに重点を置いている小型衛星企業である。小型衛星の先駆者として、動向調査、革新的な衛星部品、サブシステム、プラットフォーム、衛星ミッションやアプリケーションのための幅広い顧客向けのすぐに利用できるスペースソリューションを提供している。小型衛星の運用分野でも、システムレベルのテスト、打ち上げサービスなどの支援をしている。

Space Climate Observatory

Space Climate Observatoryセッションでは、気候変動モニタリングのため、衛星データがいかに重要な指標を提供するかを取り上げた。

Meteo FranceのDavid SALAS Y MELIA氏(気候科学者)の基調講演では、フランス国立宇宙研究センター(CNES)が実施した宇宙気象観測所(Space Climate Observatory - SCO)プロジェクトで宇宙データによる気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定の検証が行われた。 今後SCOに宇宙からの気候データがプールされ、国際的な科学コミュニティが容易に利用できる。この観測所は、政策立案者などのディシジョンメーカーに情報を提供し、持続可能な開発目標達成への一助となることが期待されている。

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