連載 「欧州宇宙ビジネス最前線」 エストニアのヨーロピアン・スペース・ウィーク:後編

エストニアの首都タリンでヨーロピアン・スペースウィークが開催された。後編では、プログラムの詳細を紹介する。

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  • コペルニクスを使った、12ヵ月の企業か育成プログラム「Copernics Accelertor」
  • エストニアにも起業家やスタートアップ企業を支援する施設が誕生した
  • 欧州政府と欧州宇宙機関が一丸となって、起業家を増やす取り組みを行っている

2017年11月3日から9日にかけて、エストニアの首都タリンでヨーロピアン・スペース・ウィーク(European Space Week、以下EUSW2017)が開催された。エストニアが欧州連合理事会の議長国になる事に伴い開催された同イベントは、欧州で最も大きな宇宙関連イベントの一つであり、欧州委員会、欧州宇宙機関(ESA)、欧州GNSS機関、EU加盟国、ESA加盟国、起業家、スタートアップ企業、デジタルコミュニティ、企業、学者、政府関係者、宇宙愛好家など、産学官から多種多様な出席者が集まり、1500人以上が出席する大盛況となった。

急速に変化する宇宙分野において、イノベーションと起業・スタートップ事業促進をメインテーマとし、ソーシャルメディアでも何千万人もの人々が数百万のツイートを発信するなど、大いに注目を集めるイベントであった。

前編から続き、後編では同イベントのプログラムの詳細を紹介する。

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EUSW2017の様子。Copyright European Commission

スペースハッカソン

ハッカソンとは、与えられた課題に対し、チームに分かれて24から48時間以内に提案を出して競う、超短時間のアイディアコンテストである。Garage48 主催のSpaceTech Hakathonでは、事前の応募者の中からプログラマーやアプリデベロッパー122人を招き、チームに分かれて48時間という限られた時間内でリモートセンシングと衛星ナビゲーションを使った事業アイディアのプロトタイプを作成した。

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14もの製品やサービスが発表され、優勝チームI Do Balloonは、衛星ナビゲーションを搭載した気球を使って簡単な信号の受発信ができる教育用商品を発表した。

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優勝チームI Do Ballonのメンバー。Copyright European Commission

コペルニクスインフォセッション

欧州委員会は、欧州連合の2大宇宙プログラムの内の一つ、地球観測プログラム「Copernicus」の利用促進と普及の為、欧州各地で定期的にインフォセッションを開催している。利活用を進めるには、まず欧州各地の産学官にコペルニクスについて知ってもらおう、という訳だ。

インフォセッションではコペルニクスの概要や、データやサービスへのアクセスの他、コペルニクスに基づいた事業例についてプレゼンが行われ、産学官から140名以上の参加者が集まった。

更にインフォセッションでは、衛星データ利活用に関するエストニアの新たな取組が発表された。

  1. ESTHub-コペルニクスを構成するSentinel衛星のデータを、エストニアにおいてよりアクセスし易くするデータミラーサイトを整備。
  2. BaltSatApps-バルト諸国における、コペルニクスを使ったデータ事業創出と市場参入の支援を目的とするプロジェクトの開始。

前編でも述べたが、デジタル産業が充実しているエストニアだけに、今後衛星データ利活用産業を益々支援していく姿勢が見受けられた。

コペルニクスアクセラレーターブートキャンプ

Copernicus Acceleratorとは欧州委員会の起業促進活動の要であり、コペルニクスを使ったスタートアップ企業の創出と起業家育成を目的とした、12ヶ月の起業家育成プログラムである。今回のブートキャンプはコペルニクスアクセラレータープログラムの一環であり、後述のCopernicus Masters大会の50人のファイナリストである「起業家の卵」に対して行われた。2日間に渡って46人のメンターと専門家から、起業までのステップ、投資家へのアプローチやプレゼンの仕方、成功事例など、様々なコーチングを受け、得にPlanetといった有名なスタートアップ企業からのプレゼンは参加者にとって大いにインスピレーションを与えたと思われる。

コペルニクスを監督する欧州委員会成長総局(DG-GROW)の宇宙政策担当ディレクター、Philippe Brunetは、「ヨーロッパは宇宙事業を開始するには最高の場所にならなければならない」と強調した。

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ブートキャンプの様子。Copyright European Commission

EU-ESA宇宙閣僚会議

EUSW2017では、欧州宇宙機関(ESA)のJan Woerner事務局長を初め、欧州委員会の宇宙政策担当者、欧州諸国の政府関係者が集まり、EU-ESA宇宙閣僚会議が開かれた。会議ではコペルニクスの将来について議論が行われ、ESA、EUと欧州諸国の代表者はコペルニクスが欧州のデジタル経済の原動力になっている事を表明した。更に欧州委員会の内需産業・起業・中小企業担当委員Elzbieta Bienkowska氏は「コペルニクスプログラムの成功は当初の期待を遥かに上回っている」と宣言した。

ESAビジネスインキュベーションセンターエストニアのオープニングセレモニー

欧州宇宙機関ESAは欧州各地に、起業家やスタートアップ企業を支援する施設、ビジネスインキュベーションセンター(BIC)を運営しており、バルト諸国では初となるESA-BICエストニアのオープニングセレモニーが行われた。エストニアがESAに加入してからたった2年である事から、ESAによるエストニアへの期待が伺えた。

サテライトマスターズ受賞セレモニー

EUSW2017のフィナーレには、「宇宙のオスカー賞」と言われるSatellite Masters Ceremonyが開催された。これは地球観測衛星のデータを使った事業案を競うビジネスコンテスト「Copernicus Masters」と、GPSの様な衛星ナビゲーションを使った事業案を競う「European Satellite Navigation Competition(以下ESNC)」の受賞者の中から最も優秀な事業案に対し、「Satellite Master」の賞が与えられるものである。コペルニクスマスターズとESNCであわせて40もの受賞者からSatellite Masters賞が選出された。

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Copernicus Masters受賞者の集合写真。Copyright European Commission

授賞セレモニーには欧州委員会、欧州宇宙機関、欧州諸国の政府関係者が多数集まり、「宇宙オスカー賞」の名前に恥じない、非常に華やかに行われた。両ビジネスコンテストの詳細は別記事で詳しくレポートする。

まとめ

6日間に渡り盛り沢山の内容で開催されたEUSW2017を通して言える事は政府の全面的なバックアップであろう。起業を志す者達を支援し、スタートアップ企業を増やし、起業しやすい環境を整備する事で、欧州をイノベーション精神を高めていこうと意気込みを感じた。欧州委員会だけではなく、欧州宇宙機関と欧州諸国の政府が一丸となって取り組んでいる。日本でも様々な県が宇宙への進出とイノベーションの促進に名乗りを挙げている。欧州諸国を日本でいう「県」と捉えれば、欧州の横の連携も大いに参考になると思われる。

(文責:宇宙ビジネスコンサルタント 佐藤龍一)

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