連載 「欧州宇宙ビジネス最前線」 エストニアのヨーロピアン・スペース・ウィーク:前編

エストニアの首都タリンでヨーロピアン・スペースウィークが開催された。前編では、本イベントの概要を紹介する。

この記事は、約5分で読めます。

記事のポイントを見る
  • 欧州最大規模の宇宙イベントがエストニアで開催
  • IT立国化により高まる利便性
  • 企業数が年間2万件の国で、宇宙における起業促進

2017年11月3日から9日にかけて、エストニアの首都タリンでヨーロピアン・スペース・ウィーク(European Space Week、以下EUSW2017)が開催された。エストニアが2018年1月から欧州連合理事会(Council of the EU)の議長国になる事に伴い開催された同イベントはエストニア政府から全面的な支援を受け、欧州の宇宙イベントの中でも非常に大規模となった。

Save-the-date-banner_0.png

(欧州委員会による提供)

宇宙の商業利用とスタートアップ企業の支援をメインテーマとした同イベントでは、欧州委員会、欧州宇宙機関ESA欧州GNSS機構GSAといった欧州宇宙業界の主要団体が集結し、更にエストニア政府からも起業・IT技術大臣Urve Palo氏が出席し、7日間に渡って1500人以上が出席した。地元新聞でも広く取り上げられ、約1万人ものツイッターがツイートを拡散。結果80万ものツイッターに広がり、インターネット上でも大反響となった。

しかしエストニアというのはどんな国なのだろうか?バルト三国の一つとして知られてはいるが、日本ではまだ馴染みの薄い国かもしれない。

1991年に旧ソ連から再独立した小国・エストニア共和国は国土は九州と同じくらいだが、人口は約130万人と東京都杉並区と世田谷区を合わせた程度。しかし独立以来、一貫して諸改革を推進し、自由経済に向けて民主化・市場経済化を推進した事で、1996年から2017年までGDP成長率は平均4.18%を維持し、欧州内でも小規模ながら堅強な経済となりつつある。2016年のGDPは231.4億ドル、国民一人あたりのGDPは17,853ドルと、EU平均の3万4千ドルの半分強程ではあるが、バルト三国の中では最も高く、ギリシャやチェコと同レベルである。国民も有能で、理数系の教育水準が高く、母語であるエストニア語の他に英語、ロシア語、フィンランド語、スウェーデン語に堪能な者が多い。

エストニアの最大の特徴はなんといってもIT立国化を国策としている点だろう。少ない人口では労働力に限りがある事から、独立後、早い段階からIT技術の導入と教育に力を入れ、高度なデジタル社会を実現した未来型国家として成長した。エストニアでは社会の至る所にネットワークやデータベース等のIT技術が整備され、行政の効率化や国民の生活の利便性向上等を果たしている。

例えば日本のマイナンバー制度が導入される15年前の2002年に、国民IDカード制度「eID」を導入し、電子署名や電子認証を行う事で行政手続きの9割はオンライン上で完結できる。電子閣議システム「e-Cabinet」の実地により、閣議は完全にペーパーレス。閣議の時間が従来の4〜5時間から30〜60分に短縮され、投票所に行かずともインターネット上から投票できる電子選挙も導入しており、完全なる電子政府、「e-Government」を実現しているのだ。

その極め付けが外国人向け電子居住サービス「e-Residency」だ。2014年に始まった同サービスは、外国人が登録するとエストニアのIDが発行され、エストニアの住人になれる。このIDを利用する事で実際にエストニアに住まなくても、インターネット上で法人手続きと口座開設ができ、30分程度で会社を設立し、世界中どこからでも企業の運営、納税手続き等が行える。いとも簡単にEU圏内に会社が作れてしまうのだ。

同制度は外国からの投資、企業誘致に大いに貢献しており、現在年間起業数はなんと2万件。2025年までに世界中から1000万人のイノベーダーを集める構想で、エストニアは欧州で最もイノベーティブな国として世界中から注目を浴びている。

これらの背景から、EUSW2017では宇宙における起業促進・スタートアップ育成をテーマとした様々なプログラムやプレゼン、パネルディスカッションが行われた。特に未来の宇宙ビジネスを担う起業家の卵への激励、コーチングを目的としたブートキャンプやハッカソン、アクセラレータイベントが実地され、非常にダイナミックな内容であった。7日間に渡ったイベントの内容は後編にて詳しく紹介する。

(文責:宇宙ビジネスコンサルタント 佐藤龍一)

月に一度、宇宙開発や宇宙ビジネスに関する
最新ニュースをお届けします。

Go to page top