連載 「欧州宇宙ビジネス最前線」 欧州における地球観測データ利用と再生可能エネルギー分野:前編

地球観測データを再生エネルギー産業での利用が注目を浴びている。

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  • 再生エネルギー産業のニーズや現状把握のため「Copernicus4Energy」が開催された
  • 衛星データを再生エネルギー産業での利用に注目が集まっている
  • より効率的な発電と電力供給「スマート発電」が検討される

近年、欧州では地球観測データを再生エネルギー産業で利用する事に注目が高まっている。地球観測データは様々な形でエネルギー発電をサポートできる事が期待されている。そこで2017年10月12日、再生エネルギー産業のニーズや現状を把握する為にベルギー、ブリュッセルにて、「Copernicus4Energy」ワークショップが開催された。

再生エネルギー分野における地球観測(EO)データとコペルニクスの利活用にフォーカスした当ワークショップでは、再生エネルギー業界事業者、地球観測データサービス事業者、政府関係者と、50人以上が出席し、地球観測データに対するエネルギー業界の現状とニーズ、地球観測データ利活用事例の紹介、そして利活用の拡大に向けた全体でのディスカッションという3部構成で行われた。

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再生エネルギー業界の地球観測データに対するニーズは大きく分けて2つある。

1つは、インフラの状態監視である。すなわち太陽光パネルや風力タービン、送電線の状態の確認であり、これには運用状況の確認とメンテナンス用という意味がある。現場作業員による目視点検やセンサによる監視だとコストも時間もかかってしまうが、衛星観測は定期的に観測が行える上、問題が発生した際、迅速な対応を可能にし、費用対効果が高い。

2つ目は、正確な環境情報による発電所運用の最適化である。なぜ再生エネルギー発電において環境情報が重要なのか?再生エネルギーは風力発電なら風の力、水力発電なら川の流れや波の力等、自然現象の力を利用する。ならば風や波の方向、速度、力量といった気象情報がより正確に把握できれば、どれぐらいの発電が見込めるのかが分かる様になる。全ての情報を衛星観測で得るのは難しいが、現場の観測データと合わせ、シミュレーションモデルに入れる事で発電予測を行う事は可能だ。これにより発電によるエネルギー価格や収益も計算でき、発電所のサイジングや立地を選ぶ時の判断材料になる。

環境をより正確に把握するのに加え、時系列データとして長期に渡って環境を分析すれば、何日後にはこれぐらいの風が、これぐらいの波が、といった予測も可能になる。これによって風力発電所なら風力タービンの動きを調整し、ベストな状態で運用する事で運用コストの削減にも繋がる。衛星観測なら長期間に渡って定期的にデータを収集できるので、こういう時系列的な分析にはピッタリである。

更に欧州では、ここに人口情報や電気の消費量等、消費者情報も組み込み、ビッグデータ化する事でより効率的な発電と電力供給を目指す「スマート発電」というコンセプトも検討されている。よって衛星観測を含むデータ利活用において、再生エネルギーとは実はなかなかポテンシャルの高い分野である事が伺える。

とはいえ欧州でも実用化には至っておらず、まだ開発段階であり、日本でもようやく検討がされ始めている状態である。そこで欧州で開発されている、再生エネルギー分野における地球観測データの利活用事例を幾つか紹介する。

CitySol

仏企業Noveltisがフランスのトゥールーズ市で実証を行っているプロジェクトCitySolは、建物の太陽光パネル設置をサポートするオンライン意思決定支援プラットフォームである。建物の屋根事にベストな設置場所や面積、見込める発電量(年/MWh)、年間を通した費用対効果等を見やすい風に表示するサービスである。これによりユーザーは投資回収に役立てる事ができる。

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SunSmart

オーストラリアでは強い紫外線が降り注ぐ為、70歳になる頃には3人に2人が皮膚がんになると言われている。そこでオーストラリア気象庁とビクトリア州がん評議会は、スマホアプリSunSmartを開発し、ユーザーがいる地点での紫外線の強さと、日焼け止めクリームを塗るタイミングを教えてくれる。これにはコペルニクスの紫外線データが利用されている。

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CLIM4ENERGY

7つの気象研究、及びサービスセンター共同による開発実証プロジェクト、CLIM4ENERGYは気候変動によるエネルギー発電への影響を可視的に表示するオンラインプラットフォームである。

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近年の気候変動の影響により、より急激な天候の変化に敏感なエネルギー発電、輸送と流通が重要になってきている。電力会社は風力発電や太陽光発電等異なる手法による発電量のバランスを取り、季節や時系列による発電の変動性や傾向を予測する必要があり、電力取引業者はエネルギー価格を予想する必要がある。気候変動によって降水パターンが変化したり、海面が上昇すれば、水力発電にも影響を与えるだろう。電力業者にとっては、気候変動の影響を数十年先まで見据えた分析が今後益々重要に成ってくる。

CLIM4ENERGYではコペルニクスの衛星観測や現場データ、シミュレーションモデルを基に、気候変数やエネルギー指標、発電ポテンシャル等、エネルギー発電に関する統計データを入手できる。これらのデータを利用する事で、例えば電力業者は風力発電と太陽光発電のそれぞれをどくらいの割合で運用するか調整したり、季節や年毎に風力の変動を分析して長期的動向を基に風力発電所の運用を調整したり、欧州諸国において太陽光発電能力が今後100年間でどう変化していくか、風力発電への気候変動の影響といった分析を行える様になり、長期的な投資計画、開発計画に役立てられる。

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欧州での再生エネルギー産業における地球観測データの利活用は、まだ本格的に事業化までには至ってないものの、既に複数の団体が試験的にサービスを展開しており、今後益々拡大していく分野である事が伺えた。後半では当ワークショップで発表された再生エネルギー産業関係者の地球観測データに対するニーズや意見について報告する。

(文責:宇宙ビジネスコンサルタント 佐藤龍一)

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