連載 ビッグデータの可能性を追求した宇宙ビジネストークイベント「EoX=未来都市ナイト」

日々人工衛星が観測する莫大なデータを蓄積しているEo(Earth Observation)データ。 この使い道について、新しいビジネスチャンスがあるとして、政府でも産業拡大に向けた施策が講じられている。 今回、この衛星から得られる地球観測データに付加価値を与えた新しいビジネスモデルを検討するトークイベント、「EoX=未来都市ナイト」をレポートする。

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  • 新しいスタイルの宇宙ビジネストークイベントが開始。
  • 不動産テックのトップランナー、株式会社トーラスの木村氏と、スペーステックの専門家、スカパーJSAT株式会社の橋本氏が講演。
  • 未来都市をテーマにした新しい宇宙ビジネスとは何か?

新たな宇宙利用促進プログラムで需要と供給に極端な非対称性を是正

8月31日(金)、東京港区機械振興会館にて、新しい宇宙ビジネス創出のためのトークイベント「EoX=未来都市ナイト」が開催された。

主催のJ-spacesystems/宇宙ビジネスコートは、このトークイベントを起点に周知活動を進め、具体的なアイデア創出のためのアイデアソン、エンジニア向けのAPIセミナーへとガイドし、事業企画化、事業化へと参加者を支援することを狙いとしている。

本イベントの企画と司会進行をつとめる宇宙ビジネスコーディネーターの持田則彦(J-spacesystems)はこう語る。

持田「宇宙ビジネスは33兆円市場として脚光を浴びる中、国内の宇宙ビジネス、特に地球観測分野に関しては、需要と供給に極端な非対称性があります。さらに言うとユーザーも少ないです。

そこで我々宇宙ビジネスコートは、需要拡大のための周知活動や、産業の裾野に取り込んだユーザーのレベルアップが課題として、この「EoX=(イーオーエックス)」というワンストップのプログラムで、この非対称性を是正する活動を始めました。

Eo(地球観測)、X(高付加価値)、=(具体的なビジネスモデルの検討)として、発声こそしませんがこの「=(イコール)」の部分を重視しています。

平面の地球観測データだけなら地図でも見てれば十分ですが、今後は標高を含む地面の変化データの上に、人々の動線、感情情報がプロットしたデータ分析が主流になる。その仮説を実証するために未来都市や、インバウンドをテーマにしています。」

a.jpg今回のイベントの司会進行役 宇宙ビジネスコーディネーター 持田則彦

未来都市をテーマに自由闊達な議論

今回のトークイベントでは、不動産テックのトップランナー、株式会社トーラスの木村幹夫氏と、スペーステックの専門家、スカパーJSAT株式会社の橋本英樹氏がゲストとして登壇した。二人とも最近の宇宙に関するビッグデータ分野では講演機会も多い。

トークイベントは、前半のシングルトークでゲスト二人の自己紹介と活動領域、関心事項の紹介があった。

まず、トーラスの木村氏からは、現在の人口・年齢分布とその相続資産、固定資産についての説明とさらにこれに衛星データを使った空き家情報を組み合わせた新しい分析システムの開発についての説明があった。

次に、スカパーJSATの橋本氏から、スカパーJSATの新しい事業領域とインターネットの新しいトレンドである、IoA(Internet of Ability)に関する説明があった。スカパーJSATはこの7月に組織再編があり、「Space for your Smile」をキーワードとする宇宙事業部として活動することとなった。その活動領域は「Space」であり、宇宙に限らず地上、海洋も含めた「空間としてのSpace」になる。

また、人間の感覚や能力がインターネットにつながるというIoAについても詳しい説明がなされた。

まさにイベントの本番、「クロストーク」では、司会進行役の持田から大きく4つのクエスチョンがゲストに投げかけられた。

Q1「不動産業の立場で未来の都市設計をするとしたら?事業を拡大させるためにどんなデータをスカパーJSATにリクエストするか?」

Q2「未来都市にすむ我々のライフスタイルはどんなものが提唱できるでしょうか?」

Q3「自社のビジネスモデルを使って東京の街をどんな風に変えてみたい?または地方都市ではどこの都市を設計してみたい?」

Q4「今日着想を得たアイデアで、今ならまだ間に合う、立ち上げた方がよいと思われるビジネスモデルとは何か?」

それぞれにおいて濃密な議論が行われながらも、EO(地球観測)を軸にした様々な技術要素、新領域の話しが展開された。コンパクトシティの根元的問題、高齢化社会での資産相続、IoTに続く次のインターネットのトレンド、人間の認知限界から、フィンテック、さらに次世代の通信インフラにも関する議論が行われた。

スカパーJSAT橋本氏から、テクノロジーが集積化しコンパクトシティを目指す方向にあっても人間の移動本能は外に向かうため、この相反が課題となるとの指摘が興味深い。

橋本氏かと木村氏との討論の中で、通信インフラの高度化について、人間の視覚認知限界を5Kがちょうど良いところにあり、8K放送などは過度な情報密度になる一方、金融テックはより高密度、高速度を求められるため、この棲み分けを理解することが我々の住む未来都市設計の重要なカギを握るとしている。

b.jpg具体的な内容を伴うため、議論にも熱が入る。(写真左から 持田、木村氏、橋本氏)

さらに今回のトークイベントは会場の参加者から意見を匿名で意見・質問を募る「Sli.Do」システムを使い、60件以上のコメントを会場内で共有した。「もっとEoと未来都市の話しを聞きたい」等のコメントが寄せられ、未来都市テーマのイベントの継続開催にも期待がかかる。

討論会の後、参加者と宇宙ビジネスコーディネーターと一緒になって懇親会が行われた。今回のイベントでは、宇宙分野の企業以外にも、未来都市をテーマにしたということで金融、保険、建設、不動産などの非宇宙分野の方々が参加された。討論会の場で新しい情報、キーワードを得たせいか懇親会でも熱心な議論が行われていた。

c.jpgXポーズで記念写真

次回はインバウンドがテーマ

宇宙ビジネスに関するカンファレンスやセミナーが各地でいくつも開催される中、具体性を伴う、宇宙ビジネスのトークイベントは今後も開催される。

次回は10月31日(水)のEoX=インバウンドナイト(https://space-eox-night-2.peatix.com)である。こちらも期待したい。

<出演者プロフィール>

〇木村 幹夫 株式会社トーラス 代表取締役社長

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福岡県福岡市出身。慶應大学経済学部卒、MENSA、三井住友銀行を経て現職。

不動産テックを駆使した不動産レーダーを開発。金融テックや人工知能・量子コンピューティングも積極的に取り込み、さらに衛星データを活用した空き家問題解決など都市開発にも取り組む。

〇橋本 英樹 スカパーJSAT株式会社
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デジタル通信・放送伝送や暗号化などの先進技術動向、UI・UX設計、経営企画やM&Aなど実務経験を活かしたプロジェクトデザインを得意としたエンタメテック、スペーステックの専門家。

イントロプレナーとして活動し、デジタルとフィジカルの融和やメディアやネットワークの有機的結合を目指す。

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