連載 「コペルニクスリレーネットワークニュース」 第2回 コペルニクスリレーネットワーク&アカデミー ローンチイベント

「Copernicus Goes Local」出席レポート

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  • コペルニクスリレーネットワークとコペルニクスアカデミーのローンチセレモニーが2017年6月6日、ベルギーの首都ブリュッセルで行われた
  • 欧州連合は「宇宙」を非常に重要な政治的分野として認識している事が伺えた
  • 「国民にもメリットがあり、見えやすい宇宙事業」というのが地球観測(EO)データを利用したサービス事業である、というのが欧州が考える宇宙ビジネスの未来像である。

欧州のコペルニクス利用促進活動、「Copernicus User Uptake」。これを構成するコペルニクスリレーネットワークとコペルニクスアカデミーのローンチセレモニーが2017年6月6日、ベルギーの首都ブリュッセルにある、欧州議会のビル、エスパース・レオポルド内の議場にて盛大に開催された。

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ローンチセレモニーのポスター 欧州委員会により提供

このセレモニーには欧州委員会と欧州議会から政府要人が多数出席した。コペルニクス、そしてその利用促進に対する欧州の本気度は相当なものである。エスパース・レオポルドは欧州連合の所在地の一つであり、日本なら国会議事堂に近い。今回のイベントを日本に例えるなら「産学官が霞ヶ関に集結し、国会議事堂の議場、内閣府の国務大臣や主要議員の超大物を招いて宇宙プログラムを盛大に祝う」、というスケールのイベントである。このことから改めて欧州連合は「宇宙」を非常に重要な政治的分野として認識していることが伺えた。

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背後の左右にあるガラス張りの建物がエスパース・レオポルド

ローンチセレモニーにはコペルニクスリレーネットワークとアカデミーから約150もの団体が出席し、約300人弱が議場を埋めた。セレモニーでは欧州委員会の域内市場・産業・起業・中小企業担当Elzbieta Bienkowska委員(日本の内閣でいう大臣)を初めとする欧州連合の要人による基調講演が行われ、その後はコペルニクスリレーネットワークとアカデミーを集めた会合が行われた。

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欧州議会の議場に集まっている様子

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議場前面にて欧州連合の要人が基調講演を行った

欧州連合が正式に宇宙プログラムを開始したのは2009年である。それから比較的急ピッチでコペルニクスとガリレオの2大宇宙プログラムの運用を開始できたのも欧州連合が一丸となって「宇宙」を重要な戦略的エリアと認識しているからだ。さらに講演者はコペルニクスが新たな事業と雇用の創出し、欧州に経済的・社会的メリットをもらしていることを挙げ、欧州はコペルニクスを今後も継続していくことを表明した。

しかし引き続き予算を確保し、コペルニクスを継続していくには欧州国民の支持を得る事が不可欠である。そのためには天気予報のように「分かりやすい・見えやすい」事業を創出する事の重要性を説いた発言が多かった。この「国民にもメリットがあり、見えやすい宇宙事業」というのが地球観測(EO)データを利用したサービス事業である、というのが欧州が考える宇宙ビジネスの未来像である。

EOデータ産業団体EARSCの調査によると、欧州のEOデータサービス事業者の収益の6割以上は地方自治体を初めとする公的団体である。すなわちコペルニクスのデータを使ったサービス事業者の顧客の大半は欧州各国の地方自治体や公的機関、省庁という事であり、官によるEOサービス調達を促進する事がEOデータ産業の成長・強化に繋がるという考えである。

地方レベルでコペルニクスの利用を促進することが重要なのはもっともだが、それをブリュッセルからトップダウンで指示を出しても効果は出ない。基調講演では「ユーザこそがコペルニクスの中核であり、地方側からボトムアップに欧州委員会にフィードバックしてほしい」という発言がたびたびされた。コペルニクスリレーネットワーク・アカデミーの目的とは、地方レベルでの産学官との連携である。地方自治体やその他のステークホルダーにプロモーションをかけ、彼らのニーズを理解し、新たな事業チャンスの発見やユーザの確保を目指しているのである。

現在コペルニクスは2020年以降の予算要求を行っている。英国のEU離脱の影響で難航すると予想されるが、現時点の予算4.3 bil EUR(約5300億円)とほぼ同額を要求するとのことだ。さらにコペルニクスに新たな地球観測分野を取り入れ、次世代コペルニクスにはCO2監視、海洋・北極圏監視、ハイパースペクトラル監視、バイオマス観測ミッションが含まれるとの事である。日本もGOSATによるCO2監視を行っているが、欧州の今後の衛星ミッションがどう影響するのか気になるところだ。

最後に宇宙関連のイベントの主催形式について日本にとって大いに参考になる点が2つある。

ひとつ目は、欧州では産学官の対話を非常に大事にしている点である。セレモニーでは出席者が欧州委員会・欧州議会の政府要人にオープンに、直接質問や提言を行えるため、産学は政府の「本気度」を見極める事ができる。一方で、政府は自分達の施策への反応を把握する事ができ、両者にとってwin-winである。欧州はこの手の産官の対話の場を設けるが非常に上手い。日本も大いに見習うべき手法だ。

もうひとつ、今回のイベントで目立ったのは、プロモーションの巧みさであった。欧州議会の議場には大型LCDスクリーンが8台程設置され、随時コペルニクスのプロモーションビデオを放映していた。

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議場内に設置されていた大型LCDスクリーン

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出席者のツイートをライブ中継していたLCDスクリーン

更にLCDスクリーンには出席者がそれぞれツイッターでイベントについてツイートしている様子がライブ中継され、臨場感溢れるメディア展開を行っていた。ツイッターにより幅広く本イベントの情報が拡散され、手安くプロモーションをかけられる。

このように、宇宙プログラム運営には政治的決意と、従来のやり方を一新した、21世紀のメディア展開とプロモーション戦略が必要であることを証明するようなイベントであった。日本だと「お国の事業」には常に堅く、古めかしいイメージがあるが、欧州のやり方を参考にし、もっと華やかでオープンに、インパクトのある手法を検討すべき時代になったのではないのだろうか。

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