連載 「コペルニクス計画全貌解説」 第2回 
センチネル衛星と地球観測(EO)データについて

地球観測衛星シリーズ「センチネル(Sentinel)」の構成と、それらが取得できる地球観測(EO)データについて紹介する。

この記事は、約8分で読めます。

記事のポイントを見る
  • コペルニクスは得られた観測データを欧州委員会が公共サービスとしてデータを全世界に無償・オープンに提供
  • 球観測衛星シリーズ、1から6まである複数の衛星(センチネル)により構成されている
  • このデザインプロセスで必要なデータを得られる様になり地球観測(EO)データを使ったサービス事業の創出を更に促進させていく

欧州連合(EU)の地球観測プログラム「コペルニクス」は、地上、海上および大気の状況の監視と、市民の安全向上を目的としており、複数の衛星や地上センサから得られた観測データを欧州宇宙機関(ESA)融合し、EUを統括する欧州委員会が公共サービスとしてデータを全世界に無償・オープンに提供しています。

今回はコペルニクスを構成するセンチネル(Sentinel)衛星と、取得するEOデータについて紹介します。

コペルニクスのシステム構成

コペルニクスは、下記3つのソースから入手されたデータを融合し、データサービスを展開しています。

1.センチネル衛星の観測データ
新規に開発される地球観測衛星シリーズ、センチネル(Sentinel)からの観測データ
2.既存の地球観測衛星の観測データ
欧州宇宙機関ESAやEU加盟国、EUMETSAT(欧州気象観測衛星機構)などの国際機関や、民間企業が運用する観測衛星からのデータ
3.現場(in-situ)データ
欧州環境機関(European Environmental Agency、EEA)など公共機関が所有する船舶、航空機、地上設備等、衛星以外の観測データ

P03.png

地球観測衛星シリーズ・センチネル(Sentinel)

コペルニクスのデータサービスの中核を担う地球観測衛星シリーズ、センチネルは1機の衛星ではなく、複数の衛星によって構成されています。センチネルにはセンチネル1から6まであり、その一つ一つに異なる役割が与えられています。それぞれに異なる種類の観測機器を搭載する事で、センチネル1は地表と海洋、センチネル4は大気など、違う対象物を継続的に、常時観測できる様になっています。
各センチネルは1機ではなく、A機とB機の2機体制による衛星コンステレーションとして運用されています。すなわちセンチネル1には1A機と1B機があり、センチネル2は2Aと2Bという体制となっています。A機とB機が寿命を終える頃にC機とD機を打ち上げ、常に2機体制で観測を行う事で、長期に渡って高頻度な全地球的観測を可能にしているのです。
センチネル衛星の製造は、EUの予算によって賄われており、基本設計はEUからの委託で欧州宇宙機関ESAが行います。詳細設計は欧州の大手宇宙メーカのエアバス・ディフェンス&スペース社(Airbus Defence & Space)やタレス・アレニア・スペース(Thales Alenia Space)などがプライム・コントラクターとして担当しています。

P03.png

ここでいう解像度とは対象物を判別できる限界値を意味します。例えば10m解像度の場合、10mよりも大きい物、すなわちビルや住宅は見えますが、自動車や人など、10mより小さい物は見えません。
衛星は地球の上空を周回していますが、地球も自転しているので、衛星が一回転するごとに地上で通過する場所が少しずつズレていきます。衛星の軌道が地上に対し、元の位置に戻るまでの日数を回帰日数と呼びます。例えばセンチネル2が東京の上空で観測を行った場合、東京を通過した後も地球を回り続けますが、東京の上空の同じ位置に来るまでは5日かかります。すなわち東京地域の観測は5日おきにしか行えない、という事になります。

センチネル衛星は2012年から打ち上げが開始されています。2017年5月現在、センチネル1と2は既に2機体制の運用が始まっており、センチネル3と5も2017年中に打ち上げられる予定です。

P03.png

各センチネルの運用スケジュール(欧州委員会により提供)

センチネル衛星の観測データ

各センチネルに異なるセンサを搭載する事で、陸域、海洋、大気などの様々な対象物の観測を行う事ができます。

P03.png

各センチネルが行う観測と利用分野

既存の地球観測衛星データ

コペルニクスはセンチネル衛星の他に、EU加盟国や欧州宇宙機関ESAが運用する地球観測衛星と民間の地球観測衛星から得た商用データも一部利用しています。

その他の現場(in-situ)データ

更にコペルニクスでは欧州環境機関(European Environmental Agency、以下EEA)が所有・運営する船舶、航空機、地上に搭載されたセンサから得られた環境観測データも利用しています。これらのデータはコペルニクスデータサービスのデータプロダクトを拡張・補完するだけではなく、衛星から得られたデータを検証するためにも使われています。

地球観測(EO)データを使ったEOデータサービス事業の創出を更に促進

この様に、欧州では欧州連合とEEAが協力し、互いのデータベースを共有する事で継続的に、信頼性のあるデータサービスを展開できる体制になっています。更に長期に渡って衛星開発スケジュールを明確にし、2030年まで衛星の打上と運用にコミットする事で、衛星メーカーもデータを利用する企業も安心して投資や事業計画ができる環境を作り上げています。
現在欧州委員会は、2030年以降運営予定の第2世代コペルニクスの仕様の作成に着手しており、データを利用する企業や大学、研究機関と連携し、システム要求を広く集めています。ユーザ側のニーズをセンチネル衛星のデザインに反映する事で、より利用者にとって使いやすいデータプロダクトを創造します。すなわち衛星を開発してから利用方法を模索するのではなく、先に利用の事を考え、そこから衛星の仕様に落とし込んでいく事で、確実にユーザが必要としているデータサービスを提供していく事が可能となります。
このユーザ利用を主体にする事を目的としたデザインプロセスによって産業界は衛星データでビジネスをするのに必要なデータを得られる様になります。そして地球観測(EO)データを使ったEOデータサービス事業の創出を更に促進させていくのです。


第3回ではコペルニクスデータサービスについてご紹介します。

月に一度、宇宙開発や宇宙ビジネスに関する
最新ニュースをお届けします。

※宇宙ビジネスコートの無料会員登録フォームへリンクします。

Go to page top