連載 「コペルニクス計画全貌解説」 第1回 
コペルニクス計画とは?

天文学者「コペルニクス」の名を冠した、欧州の地球観測プロジェクト。その詳細を連載徹底解説する。

この記事は、約9分で読めます。

記事のポイントを見る
  • コペルニクスは地上、海上および大気の環境の状況の監視と、市民の安全向上を目指す全地球観測プログラム
  • コペルニクスのデータは、より大規模なデータ社会を構築する
  • データをオープンに提供し、観測データを活用した新たなアプリケーションやサービスを生み出している

「コペルニクス」とは欧州連合(EU)の主要プログラムの一つである、地球観測プログラムの名称です。旧称はGlobal Monitoring for Environment and Security(GMES、環境と安全のためのグローバル・モニタリング)である事からも分かるように、天災やその他災害のリスクが高まる現代社会において、コペルニクスは地上、海上および大気の環境の状況の監視と、市民の安全向上を目指す全地球観測プログラムです。

コペルニクスは衛星や地上センサから得られた複数の観測データを融合し、使用可能なデータプロダクトとして変換したものをデータサービスとしてオンラインのプラットフォームからダウンロードできる様になっており、総合的データ利用システムとして運用が始まっています。既に2030年までの運用が保証されており、2030年以降の運用に向けて現在欧州連合内で予算検討が行われています。
データへの入手は全世界に向けてオープンフリー制度を取っており、研究や商業目的といった全ての面において利用は個人・団体も原則無償となっています。すなわち高速道路や橋といった公共設備の様に、コペルニクスは継続的に公共データインフラとして運用されているのです。

コペルニクスのシステム構成

コペルニクスのデータプロダクトは、3つのソースから入手されたデータを元に作成されます。

  1. 新規に開発される地球観測衛星シリーズ「Sentinel」からの観測データ
  2. 欧州宇宙機関ESAや欧州諸国、EUMETSAT(欧州気象観測衛星機構)などの国際機関が運用する観測衛星からのデータ
  3. 欧州環境機関(European Environmental Agency、EEA)など公共機関が所有する船舶、航空機、地上設備などのからの観測データ

コペルニクスのデータサービス

上記のソースから得られたデータを元に作成されたデータプロダクトは6つの分野に分かれ、それぞれ別々のオンラインデータプラットフォームを通し、6つのコアサービスとして提供されています。

  1. 陸域観測
  2. 海域観測
  3. 大気観測
  4. 気候変動
  5. 危機管理
  6. 安全保障

陸域観測と危機管理は2012年、海域観測は2014年から運用が開始されています。

利用分野

コペルニクスは農地や森林、海面、土地被覆に関する各種データを提供する事で、実に多くの分野で役立てられており、科学者、企業、公的機関、地方自治体を含むユーザによって利活用が進んでいます。

  • 農業
  • 漁業
  • 林業
  • 気候変動とエネルギー
  • 生態系と環境保全
  • 資源利用
  • 防災と市民保護
  • 人道的支援
  • 公衆衛生
  • 観光
  • 交通と安全
  • 都市と地方開発

コペルニクスがもたらす未来と経済効果

観測データは一部の技術者や科学者のみによって使用されるものではなく、ビッグデータの一部を構成する新たなコモディティになりつつあります。コペルニクスのデータサービスは観測データを継続的に無償で頻繁に提供する事で世界にデータ革命をもたらす事を目的としています。2016年の時点で、コペルニクスは1日6テラバイトものデータを輩出しており、強力なビッグデータとしてのポテンシャルを秘めているのです。宇宙産業だけではなく、コペルニクスのデータは様々な分野においてビッグデータ分析、AI、ディープラーニングといったIT技術と融合し、より大規模なデータ社会を構築していきます。既に輸送、石油とガス、保険、農業等の多数の経済セグメントが、正確で信頼性の高い地球の観測情報の恩恵を得ることが見込まれており、2030年までに、欧州において約300億ユーロの経済利益と約5万の雇用を創出することが複数の調査によって推定されています。

これからもコペルニクスは様々な画期的なビジネスモデルの創造を支援し、社会により密接したサービスやアプリケーションを開発するデータサービス産業という新たな市場の成長を促進していきます。

運営構成と予算

コペルニクスは欧州連合(EU)の内閣府的存在である行政執行機関、欧州委員会(EC)によって統括・運営されています。
ECは全体のガバナンス、財政計画の立案とサービス提供の管轄を担当しており、実際の衛星開発と運用、そしてデータ管理は欧州宇宙機関ESAに委託されています。

研究開発予算:34億ユーロ

2001年から約10年間でESA とECから34億ユーロ拠出(負担割合は、ESA が72%、ECが28%)されています。

2014-2020年運用予算:37.86億ユーロ

2014年以降は、完 全運用(full operation)となるため、従来の研究開発費ではなく、EU多年度財政枠組み(MFF)として2014-2020年分の予算要求を行い、ECは37.86億ユーロの予算を確保しました

政治背景と政策的狙い

「コペルニクス」は、全地球レベルでの環境 や安全保障関連のデータを収集管理する能力を、米国に依存せず、EUの自立性を確保する点で、2001 年 6月の欧州理事会(EU首脳会議)で「持続的発展のためのEU戦略」の一部として実施が決定されました。旧称GMESとして始まった当計画はEU諸国から産学官の有識者を集め、10年かけて議論を重ねる事でコペルニクスの構成は出来上がりました。
現在、コペルニクスの運営は、欧州委員会内の経産省にあたる成長総局(DG-GROW、正式名称:域内市場・産業・起業・中小企業総局)によって行われている事で:

  1. 欧州の新たな雇用と事業・ビジネスチャンスの創出を支援する産業促進
  2. 公共団体や地方自治体、政策決定者が環境側面を踏まえた活動や意思決定の支援

という2つの効果を狙ったプログラムとして実施されています。
欧州委員会はコペルニクスに2つの「しかけ」を設ける事で新たな事業創出を促進しています。それは1)2030年まで長期運用が保証された観測データを継続的に提供する事で、企業や起業家が安心して投資及び事業・開発計画を実行できる環境を作り、更に2)データを無償且つオープンに提供する事で、起業・開発コストを下げ、中小企業やベンチャー企業が観測データを活用した新たなアプリケーションやサービスを生み出す為のきっかけとなっているのです。
更にコペルニクスにより提供される情報やサービスを自由に活用できる環境は、市民、企業、研究者、政策決定者が自分達の活動の評価や意思決定を行うのを支援します。

コペルニクスの観測データの中核を担う地球観測衛星シリーズSentinelについてはコペルニクス大解剖第2号で詳しく説明します。

月に一度、宇宙開発や宇宙ビジネスに関する
最新ニュースをお届けします。

※宇宙ビジネスコートの無料会員登録フォームへリンクします。

Go to page top