連載 「日本宇宙開発史から読むビジネスチャンス」 第4回 
欧州発、進化する宇宙ベンチャー

日本の宇宙開史とともに歩んだからこそ見える、日本の宇宙ビジネスのこれから。元JAXA理事、現三菱電機株式会社宇宙システム事業部顧問、山浦雄一氏によるコラム、第4回。

この記事は、約9分で読めます。

記事のポイントを見る
  • 2018年・2019年の進化、小型衛星コンステレーション構築への助走
  • 北欧とニュージーランド、超小型衛星と小型ロケットでの前進
  • 小型衛星コンステレーションの課題と克服へのアプローチ

米国の超小型衛星ビジネスの先頭集団、Planet社とSpire社(コラム第3回参照)が実績を重ねている一方で、あまたある他の宇宙ベンチャーの構想は、何がどうなっているのか。そう思う人が増えているのではないか。
コラム第4回では、50kg~250kg級の衛星(以下、「SmallSat」)のコンステレーション構築に向けた進化の状況を、2018年11月にルクセンブルクで行われたカンファレンス「New Space Europe 2018」の登壇者情報を交えてお伝えする。

2018年、宇宙ベンチャー(以下、「New Space」)が世界で前進した。2019年は、New Spaceの小型衛星コンステレーション(編隊飛行)構築に向けた第2集団の動きが見える年となろう。
2018年12月、日本Axelspace社のGRUS(100kg以下)初号機が打ち上げられ、コンステレーションAxelGlobeの第一歩が始まった。2019年2月には、欧州/米国のAirbus/OneWeb社のOneWebコンステレーション(600機)の最初の衛星6機(各150kg)が同時打上げされる予定である。

ここからの話題は、フィンランド、デンマーク、ニュージーランド発。だからと言って、ムーミンや人魚姫やラスト・サムライ(ロケ)が出て来るわけではない。

小型衛星コンステレーションは何故注目されるのか

北欧に飛ぶ前に、まず頭の整理を。
小型衛星コンステレーションは、数十機~数百機以上の小さな衛星が等間隔で編隊飛行(地球周回)して、地上のどの場所にも常時同じサービス(通信、観測等)を提供するシステムである。
衛星を小さく軽く寿命を短くすれば、衛星コストと打上げ費用を下げることが出来る。寿命が短いと、進化の速い地上技術をタイムリーに反映出来る。衛星が沢山あれば、1機や2機が故障しても機能の全損にはならない。作り置きした同じ衛星を直ぐに打ち上げて補填すればいい。
「安くて最新でサービスが中断しないのが一番」という利用者目線に沿い、これまでの衛星システムの弱点を補おうとするコンセプトである。

そして、衛星打上げのロケット・射場の確保と費用低減が重要課題となり、New Spaceにとって小型ロケット打上げや射場運営もビジネスチャンスとなっている。
今日、地上の様々な技術革新、情報インフラ進化、起業環境整備などの恩恵を受け、米国・欧州・日本に加えて中国でも、様々なNew Spaceが小型衛星コンステレーション(一説には900超の構想)や小型ロケットにチャレンジしている。
国家安全保障で宇宙依存を強める米国では、機能が集中して標的になり易い大型静止衛星の弱点が認識され、強靭で即応性ある小型衛星コンステレーションと小型ロケットへの関心が高い。

北欧から来る超小型衛星コンステレーション

フィンランドICEYE社は、ヘルシンキ近郊にある大学発New Spaceで2014年に設立された。同社は、XバンドSAR(合成開口レーダ)搭載の超小型衛星ICEYE-X1(質量70kg、2018年1月打上げ)とICEYE-X2(質量80kg、2018年12月打上げ)を成功させた。ICEYE-X2では、画像取得モードがX1の1通りから3通りに増加し、解像度がX1の10mから最高1mに向上した。
X1とX2はまだ試験機であるが、ICEYE社は実用ICEYE衛星9機のコンステレーション構築を、早ければ2019年から開始したいとしている

図1.jpg

フィンランドICEYE社の超小型衛星ICEYE-X2(ICEYE)[2018年12月打上げ、SAR画像取得成功]

デンマークGOMspace社は、小都市オールボーに本社を持つNew Spaceで、2007年に設立された。1U~6UのCubeSatバス(単位Uの意味はコラム第3回参照)をカタログ化して、様々な衛星顧客の注文に応じるほか、衛星搭載用小型機器の単品販売なども行っている。
2018年2月、GOMX-4B (6U衛星)が双子のGOMX-4Aと同時に打ち上げられ(長征2Dロケット)、衛星間通信や軌道制御(電気推進)等の小型衛星コンステレーション技術の実証実験に成功した。これは、ESAが GOMspace社の6U衛星バスを用いて行った、同社との共同ミッションである。
GOMX-4Bの電気推進系は、2016年にGOMspace社が買収したスウェーデンのベンチャーNanoSpace社のMEMS(微小電気機械システム)技術を使用している。ここにも北欧の技術がある。

ニュージーランドで始まった小型ロケット商業打上げ

米国Rocket Lab社は、ニュージーランド北島にロケット工場と射場を保有し、SmallSatを低価格で頻繁に(年120回)打ち上げることを目指しElectronロケット(衛星220kg級対応)を開発してきた。同ロケットは、初の電動ポンプによる推進剤供給方式、3Dプリンタでのエンジン部品製造、CFRP製構造などの独自技術を採用している。
Rocket Lab社は、2018年11月にElectronロケット初の商業打上げに成功した後、2018年12月に2回目の商業打上げ(NASA等のCubeSat計13機)にも成功した。

図2.jpg

米国Rocket Lab社のニュージーランド射場とElectronロケット(Rocket Lab)[2018年11月商業打上げ初号機成功]

米国Vector Launch社は、SmallSatを低価格(数億ドル/回)で頻繁に(年100回)打ち上げることを目指し、Vectorロケットの開発を行っている。Vector-R(衛星60kg級対応)とVector-H(同290kg級)の2機種があり、プロピレン燃料使用、3Dプリンタでのエンジン部品製造、機体部分回収などの独自技術を採用している。
Vector Launch社は、米国の射場3箇所を使用する。初号機は、2019年2月以降に打上げの予定である。

小型衛星コンステレーションの課題克服へ

小型衛星コンステレーションの構築・運用には幾つもの課題がある。課題は大まかに言えば、技術(いろいろある)、持続するビジネスモデル、宇宙デブリ(発生阻止)の3通りである。
技術課題の克服には、世界のNew Spaceの誰かがビジネスチャンスを求めて挑んでいる。技術革新に挑むNew Spaceは米国・欧州にはいろいろあるが、日本・アジアの技術革新の取組みが見えにくい。
そして、宇宙デブリの発生阻止と除去。これが、法的枠組み整備と技術開発を急ピッチで進め解決すべき大問題である。話が本質課題に広がった所で、コラム第4回はここまで。

宇宙開発・利用の急速な環境変化の中で、日本は今後どう在るべきであろうか。日本の外を見て気付くことは多い。イノベーション創出と産業競争力強化に宇宙分野を組み込む欧州の姿など、続きはコラム第5回以降でご紹介したい。

山浦雄一(やまうら・ゆういち)

元JAXA理事、現三菱電機株式会社宇宙システム事業部顧問 山浦雄一(やまうら・ゆういち)

高校時代に人類初の月面着陸を見て、宇宙開発を志す。1978年4月~2017年3月の39年間、宇宙開発事業団(NASDA)及び宇宙航空研究開発機構(JAXA)に在籍。JAXA最後の4年間(2013年~2017年)は理事として、経営企画、産業振興、国際関係、情報システム、システムズエンジニアリングなどを担当。併せて、最高情報セキュリティ責任者(CISO)。JAXA理事退任後、2017年5月から三菱電機株式会社にて顧問(宇宙事業担当/常勤)。2008年より、筑波大学客員教授。2017年より、技術経営士。

月に一度、宇宙開発や宇宙ビジネスに関する
最新ニュースをお届けします。

※宇宙ビジネスコートの無料会員登録フォームへリンクします。

Go to page top