連載 「中村衛星データ研究室」 第1回 
地球観測ってなに?

地球観測衛星が取得したデータを使って何ができるのかを中村研究員に聞いた

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記事のポイントを見る
  • 地球観測は災害状況把握や資源供給など幅広く使われている
  • 市場規模は約14兆円
  • 地球観測データは誰でも使うことができる

地球観測ってなにをしているの?

-----「地球観測」という言葉を聞いたことがあります。具体的には誰がどのようなことをしているのですか?

中村衛星データ研究室でいう「地球観測」は、地球観測衛星が取得したデータをもとに行われています。地球観測衛星は、地上から400km~700kmの高さで地球を周回しながら地球の様子を観測しています。観測されたデータ(衛星データ)は地上に転送されたあと、地図作成、災害状況把握、資源探査、森林監視、気候変動緩和など、さまざまな場面で役立てられています。衛星データは、安定的な資源供給や持続可能な発展を目指す現代の国際社会において必要なものとなっています。

地球観測っていつから始まったの?

-----地球観測はいつごろから始まったのですか?

地球を見るという点では、アメリカで1960年に、「TIROS(タイロス)」という気象衛星が打ち上がったのが始まりだといわれています。アポロ計画のように、宇宙開拓だけではなく、宇宙から地球を見るという発想の転換だったと考えます。
地球観測衛星では、アメリカの「LANDSAT(ランドサット)」がはじまりです。1972年から陸域を観測し続けている衛星のシリーズで、今日では2013年に打ち上げられた「LANDSAT 8(ランドサット8号機)」が運用中です。

-----日本も地球観測衛星はありますか?

もちろんあります。1992年に、「ふよう(JERS-1)」が打ち上げられました。資源探査を目的にした衛星です。ふようは、主に陸域を観測しました。国土調査のほか、農林や漁業といった第一次産業、環境保全や防災など、幅広く役立てられています。1998年に、6年半にわたる運用を終えました。今は、アメリカの衛星「Terra」に搭載された日本の地球観測センサ「ASTER」が、1999年の打ち上げから16年以上地球観測をがんばっています。

衛星データは誰でも使えるの?

-----観測というと研究目的のように感じますが、研究機関だけが使っているのでしょうか?

研究機関の方に限らず、衛星データを使ったビジネスも多くあります。第一次産業、つまり農業や漁業でのデータ利用も珍しくありません。例えば、お米や大豆などを作るときの田畑の土壌管理、企業による鉱物資源や石油資源の探査などに利用されています。

-----土壌や資源の状態がわかるのですか?

はい。
衛星による地球観測では、衛星に搭載された赤外線センサやレーダーセンサにより、人の目では見えない地球の様子を見ています。これらのセンサは、防犯に用いられる赤外線監視カメラや健康診断に用いられるMRIなどのようなものだと考えると、わかりやすいかもしれません。その衛星データを解析することで、あるときには土壌の様子、あるときには海洋の温度、またあるときには山の高さなどを計算しています。「衛星データがほしい」、「現地の様子を知りたい」というニーズに合わせて、衛星データから情報を抽出しているのです。

衛星データ利用の市場規模は?

-----衛星データがほしいというニーズがあるということですが、実際はどれくらいの市場規模があるのでしょうか。

IoT時代の到来もあって、衛星データはいわゆる「ビッグデータ」のひとつとして活用され始めています。
2015年公開のデータですが、衛星データを含む衛星サービス市場は、世界中で1,229億ドル(約14兆円)あると言われています。そのうち地球観測だけでみると、16億ドル(約2,000億円)です。衛星サービス市場は、宇宙産業全体の約6割を占める一大市場です。
2025年には、地球観測だけでも、34億ドル(約3,800億円)になるという試算もあり、これからますます成長していく分野といえます。

衛星データは誰でも使えるの?

-----そんな市場があるなら、多くの人が参入できればいいですね。プロしかデータを扱えないのは残念です。

実は誰でも使うことができるんですよ。衛星データを無償で配布していく流れが高まっています。日本では産業技術総合研究所、欧州では「コペルニクス計画」、アメリカでは地質調査所などが衛星データの無償配布を行っています。
衛星データを扱う無償のソフトウェアもあり、高度な知識と技術を持つデータサイエンティストでなくても、簡単に利用できます。

-----実際にどのような方々が使っているのですか?

たとえばアメリカの農場では、農場主が広大な農地を管理するため、衛星データを使った農地管理システムを開発しました。日本では青森県が、ブランド米を作るために衛星データを利用しています。アイデア次第でいろいろ活用できるのが衛星データのおもしろいところですよ。

次回は具体的な衛星データの種類について、説明していきます。

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