連載 「新たな打上げサービス『空中発射』」 第5回 
気球使用型空中発射(最終回)

開拓される宇宙への新しい道

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 本連載の最終回となる今回は、と呼ばれる成層圏気球使用型の空中発射の方式の概要を紹介する。
 本方式は、過去の基礎研究を踏まえて、現代版としてアップデートされた打上げ方式である。
 第一宇宙速度を得るためにロケットを打上げ、速度ゼロの地上から一気に加速させ秒速約8kmまで到達させるというのはこれまで述べた通りだが、成層圏気球使用型の空中発射(※1)は最初の段ではこれとは異なる。
 本方式は、ロケットシステムを成層圏気球に取り付けてこれを放球し、高度約30kmまで浮揚させる。
 そして、目標高度に向けてロケットを発射し、ペイロードすなわち人工衛星衛星を周回軌道に投入するのである。
 前述の地上発射との明確な違いは、大気層を抜ける際に生じる空力加熱および衝撃の有無である。音速を超える従来の地上発射ロケットの先端の温度や衝撃は凄まじく、ここでは具体的な数字は避けるが航空宇宙工学の専門家がその耐熱・強度設計に最も力を注ぐ部分でもある。
 かたや成層圏気球は、時速30km以下のスピードで緩やかに上昇して打ち上げステージに至る。
 防塵・防雨さえ気にしておけばロケット側の主要機能をいくつか省略できるのがメリットだ。この他にもロケット機体内の燃料を使うことなく高度を稼ぐことで、大量の燃料が占める第一段ロケット部分や固体ロケットブースターを省略し、システムを簡素化することもコスト面での大きなメリットになる。

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 この成層圏気球使用型の空中発射の開発は現在、公益財団法人やまぐち産業振興財団の促進事業として進められ(※2)、県内のものづくり企業が中心となって『やまぐち空中発射プロジェクト』として活動し、基盤技術の開発を行っている。新しいシステムであり、研究開発要素の塊でもあることから、今後も様々な企業・大学の連携や応用技術開発が盛んに行われることが予想される。また、このプロジェクトでは、サブスケールロケットを使用した発射試験が2020年7月に予定されており、活躍に期待が高まるところである。
 宇宙へのアクセス手段は必ずしもひとつではなく、多様な手段がいくつも考案されている。実用化に向けてチャレンジする者はこれからも増えることだろう。
 この連載はこれにて終わるが、読者の頭の中にある宇宙へのアクセス手段のアイデアをかきたてることができたら幸いである。

※1・・・ロックーン(=ロケット+バルーン)とも言う。海外では、B2SpaceZero2Infinityが実用化を目指している。

※2・・・やまぐち産業イノベーション促進補助金[航空機・宇宙産業関連分野]での採択案件である。

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