連載 「佐藤龍一 欧州宇宙レポート 2019」 第1回 
欧州連合宇宙プログラムの今後

宇宙ビジネス・政策コンサルタント 佐藤龍一がおくる欧州最新情報

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2019年は欧州連合(EU)にとって変革の年であり、コペルニクス計画を始めとするEUの宇宙プログラムも新たな局面を迎えつつある。

EUの予算は多年次財政枠組み(Multiannual Financial Framework、MFF)と呼ばれ、7年毎に決める仕組みとなっている。現行の2014~2020年のMFFも終わりに近づいていることから、2019年は2021~2027年を対象とする次期長期予算案を決める時期である。更に2019年は欧州議会選挙の年でもあり、5月下旬に新たな欧州議会議員が選出された他、EUの執行機関である欧州委員会の選定が進行している。

欧州議会選挙に先立ち、2019年4月には、昨年6月に欧州委員会が提出した2021~2027年のMFFに対する暫定合意を承認した。予算規模は1兆2500億ユーロ(約150兆円、1ユーロ=約120円で換算)と、現行の2014年~2017年の1兆900億ユーロを上回り、宇宙関連予算は7年間で合計160億ユーロ(約1.9兆円)と、現行の宇宙関連予算120億ユーロからの大幅な増額となった。

EUの宇宙予算は、宇宙における欧州の世界的リーダーシップを維持する様、主に2大宇宙プログラム、地球観測システム「コペルニクス(Copernicus)」と全地球衛星測位システム「ガリレオ(Galileo)」と「EGNOS(エグノス)」の開発と運用に充てられる。予算の内訳は以下の通り:

  • ガリレオとEGNOSに97億ユーロ(約1.1兆円)

ガリレオ衛星コンステーレションの完成と維持、そして運用コスト、更に高精度GNSS信号の開発と、自動走行車、IoT、スマートフォン、交通管理等への衛生ナビゲーションサービスの市場参入支援。

  • コペルニクスに58億ユーロ(約7000億円)

現在のSentinel衛星シリーズ1~6の維持の他、二酸化炭素監視衛星等、新たなセンチネル衛星の開発と運用。

  • 新たな宇宙安全保障プログラムに5億ユーロ(約600億円)

EUは宇宙の安全保障能力において米国への依存を断ち切り、欧州独自の能力を強化する事を表明している。次期宇宙予算では、宇宙における衛星や宇宙ゴミの衝突を避け、軌道を監視するのに役立つ宇宙状況認識(Space Situational Awareness、SSA)の能力及び、自立性の強化が含まれる。更に政府用通信衛星(GOVSATCOM)イニシアチブは、EU加盟国政府に対し、信頼性、安全性と費用対効果の高い衛星通信システムを提供し、国境監視と保護、外交、市民保護と人道的介入に貢献する。

EUの宇宙プログラムは高い経済効果を生み出しており、新たな産業創出に大いに役立っている事から、産業界から非常に高い支持を得ている。特にコペルニクスは、欧州における地球観測データ産業の幕開けを感じさせる革新的なインフラとなりつつある。次期宇宙予算ではより民間事業者のニーズに合った、もっとビジネス価値のある地球観測データを生み出す衛星を整備していく見込みだ。

特にコペルニクスを構成するSentinel衛星シリーズはSentinel-1から6まであり、2030年まで運用が決定している。従って次期長期予算は2030年以降の第2世代Sentinel衛星の開発を意味する展開であり、EUは今後益々地球観測衛星のラインナップを拡大していくものと思われる。

佐藤 龍一(さとう りゅういち)

宇宙ビジネス・政策コンサルタント 佐藤 龍一(さとう りゅういち)

豪クィンズランド州大学航空宇宙工学卒業、蘭デルフト工科大学宇宙工学修士課程修了。ドイツの大手宇宙企業OHB Systemsにて、宇宙ミッション設計に関する研究を行い、修了後、ポルトガル気象研究所に衛星データ解析エンジニアとして勤務。衛星ハード面だけではなく、データ面の経験を積む。2016年に日本に帰国、日欧産業協力センターの宇宙専門研究フェロー等歴任、日欧協力についての研究、市場調査、政策分析、ニーズ調査等、欧州の宇宙専門家として産官にビジネス動向や政策分析を提供。宇宙の技術面だけではなく、衛星データ、宇宙政策・国際関係、宇宙ビジネスと、幅広い分野への知見を有する。

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