連載 「佐藤龍一 欧州宇宙レポート 2020」 第5回 
ドイツ宇宙機関がハイパースペクトルセンサを国際宇宙ステーションから運用開始

宇宙ビジネス・政策コンサルタント 佐藤龍一がおくる欧州最新情報

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光を非常に細かい波長帯毎に細分化し、観測対象をより詳細に観測することで高い情報量を提供できるハイパースペクトル観測の商業化のポテンシャルは予てから言われており、空間分解能、回帰頻度の向上について次なる衛星観測のステップとして、近年、官民の関心が高まっている。

そんな中、ドイツ宇宙機関DLRはハイパースペクトル観測に積極的に取り組んでおり、2020年にハイパースペクトル衛星EnMAPを打ち上げる予定である。それに先立ち、DLR10月末、国際宇宙ステーションに搭載したハイパースペクトルセンサDESISの運用を開始したと発表した。

DESISDLRが開発したハイパースペクトルセンサで400から1000nmの光を235ものスペクトルバンドに細分化して観測する。観測はスワスは30kmで空間分解能は30m、そして機器の重量は88kgである。米国のTeledyne Brown Engineeringが運用するプラットフォームMUSESに装着され、観測を行う。

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1DLRのハイパースペクトルセンサDESISCopyright DLR

MUSESは国際宇宙ステーション(ISS)に装着されている地球観測用の商業プラットフォームで、Teledyne Brown Engineeringが開発した。2017年にISSに装着され、地球観測機器を取り付け観測の機会を提供する事で、顧客に軌道上実証、または運用サービスを提供する。DESIS2018年に打上後、MUSESに装着され、Teledyneが運用を行う。

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2Teledyne Brown Engineeringの商用プラットフォームMUSESCopyright NASA

DESIS開発予算はDLRTeledyneによる官民パートナーシップ(PPP)によって負担された。TeledyneDESISの開発に出資するかわり、DESISの生データを入手できるのと、これを商用販売できる権利を得た。そしてDLRTeledyneに対し、優先的にDESISからの撮像を注文できる他、得た画像を科学・人道支援目的で自由に使用できるライセンス契約を結んでいる。

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3DLRTeledyneのデータポリシー(Copyright DLR

DLRDESISから得られるデータで精密農業や土地管理や環境管理、大気監視といった分野においてアルゴリズムの向上など、研究者の支援を行い、ゆくゆくは新たなアプリケーションの開発に貢献していく見込みだ。

佐藤 龍一(さとう りゅういち)

宇宙ビジネス・政策コンサルタント 佐藤 龍一(さとう りゅういち)

豪クィンズランド州大学航空宇宙工学卒業、蘭デルフト工科大学宇宙工学修士課程修了。ドイツの大手宇宙企業OHB Systemsにて、宇宙ミッション設計に関する研究を行い、修了後、ポルトガル気象研究所に衛星データ解析エンジニアとして勤務。衛星ハード面だけではなく、データ面の経験を積む。2016年に日本に帰国、日欧産業協力センターの宇宙専門研究フェロー等歴任、日欧協力についての研究、市場調査、政策分析、ニーズ調査等、欧州の宇宙専門家として産官にビジネス動向や政策分析を提供。宇宙の技術面だけではなく、衛星データ、宇宙政策・国際関係、宇宙ビジネスと、幅広い分野への知見を有する。

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