日本初の宇宙商社誕生
ロケットと小型衛星をマッチング、一貫型打上げサービスを展開

開発した衛星をどのロケットに載せるのか?衛星開発の後、打上げまでの煩雑な行程を取りまとめる商社がある。2017年に誕生した日本初の宇宙商社Space BD株式会社だ。

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  • 活況を呈する小型衛星開発市場はロケット打上げ手配が課題
  • 打上げ手配を行う「宇宙商社」が日本で初めて誕生した
  • 代表は異業種参入の永崎氏、宇宙ビジネスの縁の下の力持ちになる

小型衛星開発からロケット打上げまで

近年、小型衛星の開発が盛んになってきている。
技術の進歩で開発用の部品が比較的安価に調達できるようになったこともあり、ベンチャー企業や大学衛星はもちろんのこと、リーマンサット・プロジェクト等の市民衛星開発など、一般レベルでの小型衛星開発市場も徐々に活況を呈してきた。

ロケット打上げについても、小型衛星を搭載する市場が整いつつある。2018年初頭には小型ロケット打上げのニュースが相次いだ。1月には、地球観測衛星「ASNARO-2」を搭載したイプシロン3号機が打上げに成功。2月には3kgほどの超小型衛星「TRICOM-1R」を搭載したSS-520ロケットが打上げられ、その小ささから「電柱ロケット」として話題となった。

だがしかし「小型衛星を作った後、ロケットの手配をして宇宙に打上げるまでの工程」について、実はあまり知られていない。そこには多くの煩雑な手続きがあり、市民衛星団体などはまずそこにぶつかる。自分たちが作った衛星を、どのロケットに載せることが出来るのか?それはいつになるのか?費用はいくらかかるのか?海外の打上げであれば英語での交渉は必須となる。

永崎「開発者が開発に集中できる環境を整えたい」

Space BD株式会社は、日本で初めて衛星とロケットのマッチングを行う「宇宙商社」として2017年9月に誕生した。

日本初の「宇宙商社」誕生

Space BD株式会社を率いるのは代表取締役社長の永崎将利(ながさきまさとし)さん。大手商社に勤務ののち起業、教育領域に身を置いたのち、昨年Space BDを設立した。

永崎「商社で扱っていたのは主に鉄鋼とその原料となる鉄鉱石です。日本の良質な鉄鋼製品を世界中に販売、資源開発事業ではオーストラリアやブラジルに駐在しながら、鉱山開発や資産の優良化のために毎日が交渉でした」

商社というと華やかなイメージもあるが、永崎さんは「実は地道なコミュニケーションの積み重ね」だという。

永崎「コミュニケーションや交渉を通して信頼関係を得て、また次の取引につなげる。確かに社会人としては当たり前のことですし、だからこそ誰にでもできると思われがちですが、営業をプロとして行うとなると、ある種のスキルが必要だと思っています」

商社時代に培ったそのスキルを活かして起業するに至った。しかし、鉄鋼分野で活躍していたにも関わらず、なぜ宇宙ビジネスなのだろうか。そう聞くと「難しいことに挑戦したかったから」と笑う。

永崎「商社での経験を通じて、産業発展における役割分担の歴史を実感したのです。かつて製鉄メーカーさんが人とお金を技術開発・生産拡大に集中投下する傍ら、商社がそれら製品の海外販路開拓、資源調達、契約・輸送等々を担い、結果として日本の製鉄業は世界に冠たる産業となり、メーカーさんも商社も潤いました。今、宇宙産業の発展にはこの役割分担が必要ではないかと思うようになったのです。宇宙は過酷な領域だからこそ、技術力こそが大きな価値になります。日本にはその技術力がある。だからこそ、開発者は開発に集中してほしい。煩雑な交渉や周辺業務は私たちが行うことで、日本の技術を支えていきたいと考えています」

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ロケットと小型衛星のマッチングで打上げサービスを展開するSpace BD株式会社、永崎さん。自身のスキルを最大限に活かし、日本の宇宙ビジネスを陰から支える役割を担う。

異分野からの挑戦 ビジネスチャンスと後押し

永崎さんのSpace BD設立を後押ししたのにはいくつかのきっかけがあった。

ひとつは基礎的なことを学ぶ場としての宇宙ビジネスコートの存在だ。異業種で活躍していた永崎さんにとって宇宙業界はとてもクローズドな環境だった。わからないことも多く、質問をするために何度も通ったという。「衛星の軌道や打上げ条件など、今となっては本当に基本的な部分を丁寧に教えていただきました。ビジネスプランを説明するとアドバイスをくださいました。本当に感謝しています」と永崎さんは言う。

そしてなにより、同社の共同創業者である赤浦徹(あかうらとおる)氏との出会いだ。赤浦氏はシードやアーリーステージの投資、育成で国内最大実績を誇る「インキュベイトファンド」の代表パートナー。Forbes日本版で「影響力のある投資家」に選ばれるなど、日本屈指の投資家だ。同社のモットーは「志ある起業家の挑戦を、愚直に支え抜く」。永崎さんはその「志ある起業家」と認められ、1億円の資金を調達した。

明確なビジョンを持ち、課題点をひとつひとつクリアにしていく永崎さん。「泥臭い」と本人は自嘲するが、ひとつひとつの出会いを大切にしながら確実に成果を出す、そのビジネススピードは驚くほどに早い。
現在、Space BDを設立してまだ半年足らずにもかかわらず、気鋭の宇宙ベンチャー起業家として数多くの講演もこなしている。

宇宙産業発展のボトルネックは打上げ機会

宇宙ビジネスは第4次産業革命と相まったイノベーションの進展により他の産業を牽引する成長産業になるといわれている。
しかし特に宇宙機器産業において、現在は官需の占める割合が依然として大きい。宇宙ビジネスは、その膨大な開発費用も含め、金額的リスクが大きいのが要因だ。これは日本だけではなく、民間での宇宙ビジネスが登場してきている欧米でも、抱えている問題は共通している。

永崎さんはこの点に関して、「宇宙へのアクセスのハードルを下げることが大切」だという。

永崎「大規模衛星はインフラとして今後も必要ですし、これからも政府や大手企業が主導で行うでしょう。彼らはロケット調達までの仕組みをしっかり持っています。私たちの会社が対象とするのは、小型や超小型衛星です。大型よりも一機でできることは限られているかもしれませんが、開発期間も短く、かかる費用も小さい。超小型衛星を数十~数百機で打上げコンステレーションを組んで、高頻度で地球観測を行う試みも始まっています。そういった衛星の打上げをサポートし、参入のハードルを下げる土壌を作ることが必要です」

重厚長大から軽薄短小へ。ビジネスの転換期に必ず使われる言葉だ。宇宙ビジネスは今まさに過渡期にある。

変化する日本の宇宙ビジネスを支えていく

日本の宇宙ビジネスは、政府主導から民間へと、市場が少しずつ移行してきている状況だ。衛星データを活用したビジネスの推進を政府は積極的に応援しているが、そのために必要なパーツはまだまだ多い。その中で、より使い勝手のいい低コストの衛星データ、それを取得するための衛星が数多く打ち上がる流れは必然だ。その時にロケットとのマッチングを行うSpace BDのような存在は非常に大きな価値を持つ。

「私たちの会社は縁の下の力持ち。日本の技術力は世界に誇るものです。日本の小型衛星がより活躍できる土台を作っていきたい」と永崎さんは言う。彼こそが宇宙ビジネスを裏方として支えていく、縁の下の力持ちのようにも感じられる力強い言葉だった。

Space BD株式会社(公式サイト)
http://www.space-bd.com/

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