衛星リモートセンシングのインフラ活用
RESTEC山本氏が描く衛星データ活用の未来

宇宙は開発から利用の時代へ。中でも地球観測とそのデータ利用は、これからさらに伸びていく分野だ。一般財団法人リモート・センシング技術センター、山本彩氏にリモートセンシングとの出会いとこれからの可能性について聞いた。

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  • リモートセンシング業界をリードする一般財団法人リモート・センシング技術センター
  • 災害監視や森林管理など、リモートセンシング解析は国際貢献にも活用される
  • 研修も展開、多くの人がリモートセンシングに触れることが出来る未来をつくる

「地球の今を視る」一般財団法人リモート・センシング技術センター

一般財団法人リモート・センシング技術センター、通称RESTEC(レステック)は、その名の通りリモートセンシングで、「地球の今を視る」組織だ。ここで研究開発部部長を務める山本彩さんは、大学では地質鉱物学を専攻していた。フィールドワークを中心とする授業を通して、リモートセンシングに出会った。

山本「ちょうど、地球観測衛星のJERSが打ち上がったころでした。現地に足を運ぶフィールドワークが主だった当時、衛星から地球を視て、そのデータを解析するという地質調査がとても新鮮だったのを覚えています。フィールドワークと補完しあう衛星データの分析はこれからさらに必要になると思い、この仕事を選びました」

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リモートセンシング活用の現場の最前線で走り続ける山本彩さん。研究の傍ら多くの講演やセミナーを行うなど多忙な毎日だが、快活な笑顔でインタビューに応じてくれた。

リモートセンシングが持つ可能性

山本さんが学生時代に感じたことは、既に現実のものとなっている。今やリモートセンシングは防災や農業など、さまざまな分野で活用されるデータとなった。RESTECでも、JAXAの行う防災利用実証業務等の一環として、大規模災害時や災害予兆がある場所の調査を行い、災害復興や防災の基礎データとして政府や自治体に提供している。

山本「いざ災害が起きたとき、土砂崩れなどによる道路の寸断など災害状況の把握はもちろんのこと、目視では把握するのが難しい地盤沈下なども面で監視することができます。2015年、箱根山で大湧谷が隆起したときにも、国土地理院さんなどが衛星「だいち2号」のデータを使った分析結果を出しています」

国際協力という点でも衛星データの活用は欠かせない。森林破壊や水質汚染などは一国の問題ではなく、今は地球全体で把握し取り組まねばならない課題として認識されている。衛星から広域のデータを撮り、フィールドワークとともに原因を追究し、解決策を示す。実際、RESTECの入所希望者の中には「国際貢献をしたい」というものもあるという。
活躍領域は地上だけではない。山本さんは、小惑星探査機「はやぶさ」や月探査衛星「かぐや」のデータ解析や普及啓発業務にも携わって来ている。大気や樹木など遮るものがない月などの天体の方が、地質情報をリモートセンシングによって得ることが地球よりは比較的容易だという。

このようにリモートセンシングは私たちの生活には欠かせないものになっている。しかしセンシング技術や分析技術そのものには、あまり注目されないのも現状だ。

地形データのさまざまな展開

RESTECでは衛星データやそこから得られた地形データを、さまざまな形で活用している。2017年夏には、好きな場所の衛星写真をプリントできるセミオーダーのTシャツを発売した。都市、山岳、港湾、それぞれに趣が違い、人気を博している。

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キャッチコピーは「その場所を着よう」。好きな場所を選んで、Tシャツの他スマートフォンケースなどにプリントできる、衛星データをビジュアルで楽しめる商品だ。

また、地形データをもとに金型を作成し、氷を作る「3D宇宙アイスモールド」という商品開発を行う宙テクノロジー株式会社にも協力している。氷塊を挟むと短時間で金型に添った氷ができる、金属と氷の熱伝導性の違いを利用した商品だ。宇宙ビジネスのアイデアを競うコンテスト「S-Booster2017」に出場し、みごと15組のファイナリストに選出された。

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宇宙ビジネスコンテスト「S-Booster2017」での風景。氷の形は、あらかじめオーダーされた地形データの形にできる。富士山の水で富士山の形の氷を作るなど、商品展開の想像力をかきたてられるアイデアだ。

リモートセンシングはより身近に

山本「現代の人たち、特に若い人や子どもなどは、「宇宙から地球を視る」ということが日常になっています。今はスマホでも地図アプリがあり、Google Earthも身近に使える。地球を視るということが、当たり前になっています」

山本さんは、一般向けの講演などにも積極的に参加し、宇宙のしくみやリモートセンシングについて講義を行っている。山本さんの登壇風景を何度か拝見したが、相手の理解レベルに合わせてしっかりと届くように話すのが印象的だ。子ども向けには自由研究のアイデアに使ってもらえるよう、夏に楽しめるブースを出展するなどしている。

山本「理科は日常にとても役立つもの。私たちの活動がきっかけになって、理科や科学、ひいては地球観測はおもしろいと、未来を担う子供たちに感じてもらえたらうれしいですね」

専門家を育成する研修も充実している。衛星データ利用はこれから伸びるビジネス分野として注目されている。そのためのリモートセンシング解析技術もスキルとしてより求められるものとなっている。

リモートセンシングはすでに社会を支えるインフラとなろうとしている。それでも山本さんは、今よりも、さらに人が社会で役立てるような価値にしていきたいという。

山本「地球観測は日常生活の上でなくてはならないと多くの人が感じてもらえるくらい、価値を感じてもらえるようにしていきたいですね」

現在政府は衛星データにアクセスしやすい環境を整備している最中だ。山本さんの描く、リモートセンシングがより身近になる社会は、きっとそう遠くない未来、実現するに違いない。

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