広がる宇宙ビジネスのすそ野
町工場で作る人工衛星

サラリーマンが趣味で人工衛星の打ち上げを目指す「リーマンサット・プロジェクト」。その活動とビジネスチャンスについて伺った。

この記事は、約8分で読めます。

記事のポイントを見る
  • 活動開始からわずか数年で、打ち上げ可能な人工衛星を作る社会人団体
  • 多種多様な本業を持つ「サラリーマン」たちが宇宙開発を行う
  • 宇宙開発の敷居が低くなり、ビジネスチャンスが広がっている

「宇宙開発を行っている団体」と聞いて、まずイメージをするのが、大学の研究員、一部の大手企業、新しいビジネスチャンスを狙うベンチャー企業などだろう。そんな中、本業ではなく、趣味として人工衛星を作り、打ち上げようとしている団体がある。その名も「リーマンサット・プロジェクト」。由来は「サラリーマン+サテライト」、昼間は「サラリーマン」として本業を別に持ち、終業後や休日に人工衛星開発を行う社会人団体だ。その創業メンバー4名に「誰にでも関われる宇宙開発」について話を聞いた。

休日を使って人工衛星を作る

リーマンサット・プロジェクトは、宇宙開発に挑戦したい5人の社会人が、テクノロジー系モノづくりイベントに参加してメンバーの募集をしたことから始まった。

菅田「宇宙開発を共に志すメンバーを集めるため、2日間で500枚を配るつもりでチラシを用意しました。ところが予想に反して大盛況で、半日で全てのチラシを配り終えてしまった」

IMG_8180.JPG

初めてのイベントで想定外の反響があったことを興奮気味に話す菅田氏

大谷「イベントが終わった翌月にさっそく、キックオフミーティングを行いました。イベントでのチラシ配りで反響があったとはいえ、実際は5人くらい集まればよいかと考えていました。しかし実際集まったのは30人以上。宇宙開発は多くの人が憧れるものだということに改めて気づきました」

こうして30名のメンバーとともに民生部品で作る、人工衛星製作プロジェクトがスタートした。

「本気の趣味がビジネスを作る」

日本では収益を上げる可能性が未知な事業に対して、投資を敬遠する傾向がある。そのため宇宙ビジネスへの参入を狙う企業も投資家も、海外と比べて未だ少ないのが現状だ。また、今まで日本の宇宙開発は自然科学の発展や研究に主軸が置かれていたため、プロダクトの量産化や再利用についてもまだまだ乏しい。これらが宇宙ビジネスを民間で行う上での障壁になると大谷さんは考えている。

大谷「学生の頃にアメリカで、Xプライズ財団の主催するXプライズカップというロケット打ち上げコンペの日本チームにボランティアをしていたことがありました。賞金レースと絡めて新しい分野のモノづくりを楽しみ、新たな産業を作っていく。そういった仕組みが、日本ではまだ少ないと感じます。」

リーマンサット・プロジェクトは、「趣味として宇宙開発を行う」団体だ。前述の通り。宇宙開発はまだ狭き門だ。リーマンサット・プロジェクトは、宇宙開発の道を一度はあきらめた人も、もう一度、自分のできる範囲でその夢を追うことができるのが魅力だ。

大谷「将来の勉強としてリーマンサットで人工衛星を作ったり、何か新しいプロジェクトを作ったりすることもできます。まずは趣味で始めて、ビジネス化できる目途が立ってきたらリーマンサットを卒業する。そんなふうにリーマンサットを活用してもらってもいいと思います。本気の趣味がビジネスを作る、そういうこともあるんじゃないかなと思いますね」

多くの人がリーマンサット・プロジェクトを知り、参加する理由のひとつに、昨今の宇宙ベンチャーの隆盛が起因しているという。

庄子「宇宙ベンチャー企業が注目されることで、宇宙の魅力がよりたくさんの方に伝わり、宇宙開発に関わりたいと思う人が増えているように感じます。その結果、リーマンサットに入りたいと思う人が増え、おかげで、私たちは多くの仲間に会うことが出来ていると思います」

IMG_8155.JPG

宇宙ベンチャーに人気が集まるほど、リーマンサットの認知が広がり、新たな出会いに繋がると話す大谷氏(右)と庄子氏(左)。

夢をカタチにする明確なビジョン

現在、リーマンサット・プロジェクトのメンバーは金沢、大阪、北九州の支部を含めると170名を超え、活動するメンバーのバックグラウンドは、多様性を増している。デザインを本業とする人は人工衛星のデザインを考え、町工場の経営者が工場を開放して、人工衛星の部品の溶接や加工をする。営業を本業とする人は衛星を搭載するロケットについての交渉を行う。それぞれの強みを生かしながらプロジェクトを進めている。

現在製作中の人工衛星は、一般市場で入手可能な民生部品を購入したもので、宇宙空間でも使えるように、自ら加工を施している。従来の衛星に使われているような宇宙空間での動作が保証された特注品や高価な加工品は、一切使っていない。

宮本「立ち上げから3年経ち、現在は試作機として零号機の開発を行っています。3年やってきてテンプレートとするものができあがりつつあるので、次回は初号機、その後は毎年1機を打ち上げることができる量産体制を作りたいと思います。小型衛星であれば、町工場の技術があれば十分に作ることができると思います。」

IMG_8163.JPG

宮本氏が持つのはプロトタイプ。外装から内部構造まですべてメンバーが考え、加工している

今後は、零号機を打ち上げた以降も、毎年1機を打ち上げる予定だ。全国にリーマンサット・プロジェクト支部を作り、人工衛星を作って打ち上げるようなコンペティションイベントを開催していくことを目標にしている。

発足してわずか3年にもかかわらず、多くのメンバーを集め、打ち上げを現実的にしたのは、メンバーそれぞれの強みを生かす柔軟な組織体制、それに加えてビジョンの明確さにある

大谷「宇宙開発は多くの人が憧れると思います。まずはそれをカタチにする。量産・継続できる体制を作っていきます。そのためには資金も重要。零号機ではReadyforさんにご協力いただき、2017年中にはクラウドファンディングを実施します。」
庄子「憧れをカタチにすることでまた次の目標が見えてくると思います。宇宙を身近にするのではなく、身近なものを宇宙に持っていきたいですね。」

零号機には、全国に配置した「宇宙ポスト」に寄せられた、大勢の人の願いごとを乗せて宇宙に運ぶ予定だ。開発に携わる人も、そうでない人も、一緒に宇宙を目指す。

「宇宙開発は誰でも関われる」。その「誰でも」は明確なビジョンのもとに、宇宙開発の面白さに惹かれて集まった人たちだ。彼らの中から、新たなビジネスが生まれる日も近い。

そらこと編集部

編集部がセレクトした記事をお届けします そらこと編集部

宇宙ビジネスのすべてがわかるメディア「そらこと」の編集部です

月に一度、宇宙開発や宇宙ビジネスに関する
最新ニュースをお届けします。

Go to page top