宇宙ビジネス創出ネットワーク
2018年のS-NET

民間の宇宙ビジネス参入の場を広めていく役割を担う、スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク(S-NET)。東京で行われた3回のハッカソンを通じて、参加者の様子などをレポートする。

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記事のポイントを見る
  • 2018年3月、宇宙シンポジウムにてS-NETの成果発表があった
  • S-NET発の事業が4月に発足、小型衛星用の電源供給事業
  • 2018年に多くを巻き込む場づくりができるか期待

民間の宇宙ビジネス参入の場を広めていく役割を担う、スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク(S-NET)。プロジェクト組成や事業創出を目的に内閣府が主導している。参加者は基本的には、新産業・サービス創出に関心をもつ企業・個人・団体等であれば、誰でも可能であり、有識者からのアドバイスや他分野との共創などで、新規プロジェクトを立ち上げることができるネットワーキングの場として活用されている。

2018年3月20日、内閣府主催宇宙シンポジウムにて2017年度の成果発表がなされた。S-NET東京セミナーから出た2件のビジネスアイデアも、壇上にて発表された。ビジネスアイデアの紹介とともに、今後のS-NET活動について、発表された内容をまとめた。

内閣府主催宇宙シンポジウムでの、S-NETの2017年の活動報告

S-NETは、民間の宇宙ビジネス参入の場を広めていく役割を担う、内閣府主催のネットワーク組織だ。既にお伝えした通り、地方セミナーで各地方に宇宙ビジネスの土壌を作り、東京セミナーでは新規事業企画を行っている。

内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 参事官 髙倉秀和(たかくらひでかず)氏は、S-NETの取り組みを「多様な企業を取り込んだ宇宙関連の新たなイノベーションを創造する」場だと説明する。S-NETは、会員になることでさまざまな情報を受け取ることが出来る。現時点での会員は約500名、その60%以上が非宇宙業界に属している。

髙倉参事官「これまで地域への、宇宙ビジネスの新規創造の浸透を行ってきたが、今後は更なる拡大が必要だ」

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髙倉参事官によるS-NET活動の報告。次年度の取り組みについても説明された。

超小型衛星打ち上げ需要の増加と、規格化の重要性

東京セミナーからのビジネスアイデアが2件発表されたが、注目したいのは2件とも、超小型衛星開発における需要拡大・創出を重視していることだ。
現在、世界的に、小型・超小型衛星の打ち上げが増加している。小型・超小型衛星により、さまざまな宇宙ビジネスへの展開や宇宙利用が可能になるとされているが、それには安定的に衛星が供給される必要がある。
それに対して、関西大学の山縣雅紀(やまがたまさき)氏は、小型衛星への電源供給でそれを解決し、続くリーマンサットプロジェクトの宮本卓(みやもとたく)氏は市民衛星団体による小型衛星開発の活性化を行うことで小型衛星市場の需要拡大を目指している。

高信頼性宇宙機用電源の安定供給事業

山縣氏は「人工衛星部品の中でも、電源に使用される電池の確保が問題」という。

山縣「人工衛星製造のボトルネックは、電源の確保です。小型・超小型衛星用電源の、製造および供給源は現時点ではほぼありません」

人工衛星用の部品は、取り扱いの難しい部品だ。民間の衛星開発が活発になり、開発のハードルが下がり、多くの人が宇宙開発に触れることができるようになった反面、取り扱いの不慣れさゆえ、重大な事故を起こす可能性も考えられる。そのような事故が起きてしまえば、打ち上げ側としてもその後の受け入れが難しくなってしまう。

その問題を解決するため、山縣氏のチームは、ユニット対応の超小型人工衛星用電源の規格化を事業とした。目指すところは、小型衛星、小型ロケット、電池産業の活性化だ。供給する電源については、ユニット対応の規格化によるコスト低減をするほか、スクリーニングから審査に必要な事前試験までを行い信頼性を担保する。

「宇宙を目指す全ての人へ、安心で使いやすい電源を供給する」とし、2018年4月に起業を予定している。

発表資料(高信頼性宇宙機用電源の安定供給事業

市民衛星を核とした宇宙産業振興・社会貢献事業

市民衛星は、その名の通り、市民が開発する人工衛星だ。「リーマンサットプロジェクト」の代表を務める宮本氏は、「市民衛星というカテゴリーを新たに作ることで、宇宙開発の参入障壁を下げる」としている。

宇宙産業ビジョン2030においても、「新たなプレイヤーを創出していくかが、宇宙産業の振興に向けた一つの鍵となる」としているように、民間参入の障壁を下げることがまずはその一歩となるとの考えだ。市民衛星は「地域活性化、地域人材育成を目的とし、メンバーが組織の垣根を越えて個人として集い、設計・開発される人工衛星」として、現在さまざまな地域で活動が始まっている。この動きを一層加速させたいとするのが、今回の事業提案だ。

その代表的な取り組みとして、「CubeSat関ヶ原」を行う。関西を中心に活躍する「ドリームサテライトプロジェクト」と、関東に活動拠点を置く「リーマンサットプロジェクト」をコンペティション形式にして、それぞれの団体の活動を盛り上げるというものだ。審判はSpace BDが務める。こちらも4月にキックオフのイベントを行う予定だという。

発表資料(市民衛星を核とした宇宙産業振興・社会貢献事業

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宇宙シンポジウムは日比谷のイイノホールにて行われた。12件のS-NETのビジネスアイデアはホワイエにて展示された。

新たなビジネス創造のための場、S-NETの方針

2018年は、S-NETは拡大を目指す。大きなポイントとなるのがIT企業などの、ユーザに近いソリューションサービス事業者をいかに巻き込むかだ。また、地方セミナーで行っているとおり、地域の課題解決を衛星データでどのように解決するかといったアイデアも必要となる。

そのために、2018年は窓口相談機能、支援策の充実を行う。その上で、希望者がより積極的に参加していく仕組みを作っていくという。
そのための施策のひとつめは、全国各地でのネットワーキングの機会を増やすことだ。セミナーだけでなく、勉強会やアイデアソンなどさまざまな形で会員が参加できる機会を広げる。事業化の相談についての窓口も開かれた状態にする。
次に、他機関、他イベントへとの連携でS-NETの事業化を促進させる。たとえば2017年に開催された「S-Booster2017」などのイベントがそれに当たる。
そして最後に支援策の強化だ。3月に発表された、投資家と事業者のマッチングを行う「S-Matching」は、新たな事業を目指す人をVCやエンジェル投資家などと結びつけるしくみだ。今まではビジネスアイデアを持った個人やベンチャー企業に、投資を受ける機会を提供することで事業化を進めたい考えだ。

1000億円のリスクマネー

当日は安倍首相が登壇し「1000億円のリスクマネーを供給する」と発表した。政府はよりいっそう、より早く、宇宙ビジネスを日本の産業のひとつとして成長させていきたい考えだ。S-NETがどのように「場」づくりをしていくのか、今年度の宇宙ビジネスの広がりにS-NETがどのような効果を発揮するのかが、楽しみだ。

S-NET公式サイト
https://www.s-net.space/

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