リーマンサット・プロジェクト
「市民衛星団体」としての強み

「リーマンサット・プロジェクト」の開発した小型衛星「RSP-00」が、国際宇宙ステーションの「きぼう」から放出されることが決まった。サラリーマンが行う宇宙開発が、大きな一歩を踏み出す。

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  • リーマンサット・プロジェクト零号機を2018年度中に打ち上げる
  • 組織としての強みは、参加者が自発的に楽しめる文化
  • 市民衛星団体の先駆けとして宇宙ビジネスに関わるハードルを下げていく

小型衛星「RSP-00」、国際宇宙ステーションからの放出が決定

サラリーマンが行う宇宙開発が、大きな一歩を踏み出す。「リーマンサット・プロジェクト」の開発した小型衛星「RSP-00」が、国際宇宙ステーションの「きぼう」から放出されることが決まった。打ち上げ費用はクラウドファウンディングで調達した。打ち上げにかかる費用は約500万円。メンバー内での費用調達にも限りがあり、不足分はクラウドファウンディングで調達する形だ。2017年2月末に目標金額200万円を達成し、無事打ち上げの契約を行うこととなった。

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クラウドファウンディングでは、目標の200万円を大きく超える金額が集まった。

多種多様な人が集う定例会

本業はサラリーマン、趣味は宇宙開発。リーマンサット・プロジェクトは、一般市民が趣味として宇宙開発を行う場だ。創設からわずか3年足らずで人工衛星を開発から打ち上げまで行う、趣味活動の団体の原動力はなにか。毎月月末に行われている定例会を取材した。

2月の定例会参加者は100名ほどだった。年齢はさまざま。中学生から大学生、中高年の姿も見られる。プログラムはある程度決められているが、各自飲み物などを持ち込みながら出入りも自由だ。衛星開発グループ、広報グループなどいくつかのチームに分かれて運営されている。全体発表のあとは分科会としてチームごとに進捗会議が設けられる。

サードプレイスとして楽しめる場所

リーマンサット・プロジェクトの会員は、2018年2月時点で200名を超えた。方針は、来る者拒まず去る者追わず。サラリーマンは忙しい。家庭や仕事に追われ、参加できなこともある。中には、興味がなくなった、転勤してしまったなど、いろいろな理由で定例会に参加できないこともある。

ファウンダーの大谷和敬(おおたにかずたか)さんは言う。

大谷「いったん参加を決めたものの、いろいろな事情で定例会議に来れないこともあるでしょう。それを負い目に感じてほしくありません。あくまでリーマンサット・プロジェクトは趣味団体。やりたいときにやりたいことをやりに来ればいい。」

一方で、「せっかく自分の時間を使うのだから、参加するならやりたいことに対して積極的に関わってほしい」ともいう。

大谷「リーマンサット・プロジェクトは、学校でも仕事でも家庭でもない、サードプレイスとして楽しむ場所だと思っています。人工衛星開発だけでなく、アクセサリー制作、飲み会はもちろん、キャンプファイヤーまで色々なことをやっています。年齢も関係ありません。楽しみ方は何でもいいです。ただし、やる以上は振り切ってほしい。大人がたくさん笑える場所が、リーマンサット・プロジェクトです」

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コワーキングスペースで毎月末行われる定例会。職種、年齢、性別ともに非常に豊かな集まりだ。

リーマンサット・プロジェクトの広がり

毎月末行われる定例会では、新規参加希望者から挨拶がある。年齢や職業はさまざまだ。なかには「北海道のインターステラテクノロジズの打ち上げ(2017年7月)で会った人から、リーマンサット・プロジェクトの話を聞いた」「名古屋の知人から聞いた」など、全国各地で、リーマンサット・プロジェクトのクチコミを聞いて参加したひともいる。リーマンサット・プロジェクトとしては積極的な勧誘は特に行っていない。楽しいと思うことを発信し、いまいる参加者が心から楽しむことが、また次の参加者を呼び込むという好循環になっている。

組織が大きくなると、運営としては難しくならないのだろうか。大谷さんの発表が終わったあと、バックヤードで話を聞いた。

大谷「ルールといえば、お金や契約などが絡む面では必ず相談をするというくらい。そして先ほどもお伝えしましたが楽しむために積極的に参加してほしいということ。自分たちで動かなければなにも始まりません。やりたいことを楽しんでできる集まりだから、多くの人が集ってくれていると思います。」

一方で、本来の宇宙開発という趣旨以外の活動も多いように見える。

大谷「技術開発に特化してしまうと見えてこないことがあると思います。広報やマーケティングが得意な人、開発が得意な人、営業が得意な人、色々な人がそれぞれの得意分野を持ち寄って、宇宙開発を行っています。人工衛星開発は、狼煙です。この狼煙のもとに、それぞれが得意な分野でプロジェクトに関わり、開発を進めていく。理系でも文系でも、学生でも社会人でも、普通の人たちが、さまざまな形で宇宙開発に携われること、それがリーマンサット・プロジェクトの魅力です。そうして宇宙が好きな人が集まって、それが次の活動につながっていくのだと考えています。」

リーマンサット・プロジェクトは、人工衛星開発のみだけではなく、多種多様な人たちが、それぞれの楽しみを発信していく場所として存在している。

「日本の宇宙分野、『人』少ないよね?」

3月20日に行われた、内閣府主催宇宙シンポジウムにおいて、2017年のS-NET活動の発表がされた。S-NETの正式名称は「スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク」。プロジェクト組成や事業創出を目的に、内閣府が主催する、民間の宇宙ビジネス参入の場だ。参加者は基本的には、新産業・サービス創出に関心をもつ企業・個人・団体等であれば、誰でも可能であり、有識者からのアドバイスや他分野との共創などで、新規プロジェクトを立ち上げることができる、ネットワーキングの場として活用されている。

2017年は北海道、福井県、沖縄県という3回の地方セミナーに加え、ハッカソン形式で東京セミナーが3回に渡り開催された。東京セミナーの目的はアイデアの事業化。12件のアイデアの中から、2件が、この宇宙シンポジウムの壇上で発表される運びとなった。

発表された2件のうちのひとつが、リーマンサット・プロジェクトのメンバーが中心となって考えられたものだ。リーマンサット・プロジェクトの母体は一般社団法人リーマンサット・スペーシズ。その代表理事を務める宮本卓(みやもとたく)さんが、そして500人の満席の会場でビジネスアイデアの発表を行った。それが「市民衛星を核とした宇宙産業振興・社会貢献事業」(資料PDF)だ。

アイデアは、市民衛星という新たなカテゴリーを作ることで、宇宙産業振興を行っていくというもの。宮本さんは、壇上のスライドで「日本では宇宙ビジネスに関わる人が少ないことが課題」と伝えた。内閣府の発表した宇宙産業ビジョン2030でも「いかに新たなプレイヤーを創出していくかが、宇宙産業の振興に向けた一つの鍵となる」としている。そこで「市民衛星」という形で参入障壁を下げ、宇宙ビジネスの裾野を広げていきたい考えだ。また、それによる地域活性化なども視野に入れている。まさにリーマンサット・プロジェクトの活動そのものだ。

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「『人』少ないよね?」というストレートでフランクな語り口のスライドで、会場からは笑いが漏れた

市民衛星対決「東西関ヶ原」

市民衛星開発は、既に全国各地で進んでいる。そのうちのひとつが、リーマンサット・プロジェクトと同じ時期に、宇宙を夢見る有志で企画した人工衛星を打ち上げる「ドリームサテライトプロジェクト」。関西大学の山縣雅紀(やまがたまさき)さんが関わる超小型衛星プロジェクトで、関西に拠点を置いている。前述の「市民衛星」というフレーズは山縣さんの造語だ。前述の「スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク(S-NET)」にて「市民衛星を核とした宇宙産業振興・社会貢献事業」のプロジェクトをリーマンサット・プロジェクトのメンバーと山縣さんらが立ち上げ、その中で出てきたフレーズだという。

リーマンサット・プロジェクトと、ドリームサテライトプロジェクトは日本を代表する市民が中心となった衛星開発の団体であり、「市民だからこそできること」を大切にして活動している。

そこで考案されたのが、「関ヶ原プロジェクト」だ。東京に拠点を置くリーマンサット・プロジェクトと、関西のドリームサテライトプロジェクトが競い合うという、市民衛星初のコンペティションを「関ヶ原プロジェクト」と称して、市民衛星団体の活性化につなげたい考えだ。審判は宇宙商社のSpace BDが行う。

市民衛星開発は、誰もが参加できる草野球

リーマンサット・プロジェクトの成り立ちを創設メンバーに聞くと「数年前に新橋の居酒屋で、宇宙開発したいねと話していた」と恥ずかしそうに笑う。「やりたいね」で進んだプロジェクトが、人工衛星を開発し、クラウドファウンディングで資金を集め、今年ついに宇宙を目指す。今年打ち上げ予定の零号機「RSP-00」に続く衛星も開発を行っており、現在メンバーを募集しているという。誰もが関われる宇宙開発団体のことを、大谷さんは「草野球のような組織」という。

大谷「誰もが気軽に参加できるということに意義があると思う」

リーマンサット・プロジェクトの名前は、今や宇宙に興味がある人たちの中では少しずつ浸透してきている。打ち上がったあとにどのような組織に成長しているのか。市民衛星開発団体としての今後の活動に注目していきたい。

リーマンサット・プロジェクト(公式サイト)
http://www.rymansat.com/

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