衛星画像のショートフィルム
「めぐりあいJAXA 2018」

「かぐや」が捉えた月面、「だいち」が捉えた地表を、動画で観望するアートイベント「めぐりあいJAXA 2018」。衛星画像を使った新しいイベントの形。

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観測画像を、ショートムービーとして見る。「めぐりあいJAXA」は、2017年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が持つ超高精細画像を、BGMや演出などを一切つけない状態で上映したイベントだ。2018年は、2月中旬に調布市せんがわ劇場にて、月周回衛星「かぐや」(SELENE)の動画と、地球の陸域を観測する陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の動画変換した画像が上映された。

JAXAには非常に多くの、クオリティの高い静止画や動画がアーカイブされているが、我々が気軽に目にすることはない。今回その上映を行ったのは「映画の街」を謳う、調布市の、公益財団法人調布市文化・コミュニティ振興財団。調布市にはJAXAの調布航空宇宙センターがあるところから「衛星画像を使った映像を映画として上映できるのではないか」と企画された。

月周回衛星「かぐや」陸域観測衛星「だいち」

第一部は「かぐや」の映像だ。月周回衛星かぐやは、アポロ以降最大の月探査計画と言われている。2007年に、種子島宇宙センターからH-IIAロケット13号機で打ち上げられた。2009年に月面に制御落下させられるまで、おおよそ1年半にわたり、月面の観測を行った。最近では、月に巨大な空洞があることが発見されるなど、現在もその観測の成果が表れている。かぐやには、NHKのハイビジョンカメラが搭載された。月の地表から地球が現れる「地球の出(アース・ライズ)」も撮影するなど、静かながら迫力のある映像を残している。

第二部は「だいち」の映像が上映された。だいちは地球観測衛星で、主に陸域を観測する陸域観測技術衛星だ。地図作成・地球観測・災害状況の把握・資源探査など、幅広い分野での利用を目的に開発され、地球規模の環境観測を高精度で行った。現在はだいち2号(ALOS-2)が運用中。2020年には、だいち3号(ALOS-3)が打上げられる。
だいちは、2006年にH-IIAロケット8号機で打ち上げられた。2011年4月に機能停止し、設計寿命3年を全うした。

このだいちの、最後の仕事が、2011年3月11日に起きた東日本大震災だ。東北地方の太平洋沖で、国内観測史上最大となるマグニチュード9.0の地震が発生、この地震で東北地方太平洋沿岸部は非常に大きな被害を受けた。地球観測衛星は災害観測も行う。被災地の状況をいち早く、広範囲で把握することが出来るからだ。

(参考)
JAXA第一宇宙技術部門 衛星利用推進サイト
http://www.sapc.jaxa.jp/work/antidisaster/

専門家による講演と上映、キュレーターによる演出バランス

今回のイベントでは、JAXAとともに一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)からも講師が登壇し、衛星の作りやミッションといった概要のほかに、月面・地球観測についても講演した。科学技術イベントではなく、あくまで芸術イベントとしてその衛星画像の美しい映像を「観望」しに来場した客が多い中、映像の前に講演が行われた。

上映は無音で行われた。ゆっくりと静かに月面・地表が流れていく。どちらも衛星の上に自分が乗っているかのような感覚にさせるものだった。第二部のだいちの映像は、震災直後の東北の映像だった。だいちがただ静かに、崩れた地表を撮影する。無音だからこそそこにある被害の大きさが伝わってくる。講演も含め5時間という長い時間にも関わらず、途中退場者はほぼいなかった。

本イベントを企画した、キュレーターの澤隆志氏によれば「無音であることに意味がある」という。

澤「宇宙関連のイベントはアートか学術に偏りがちです。月面や地球は、衛星という無人の機械が撮影したもので、美意識や表現といったものがない、「素」の映像そのもので十分美しい。その美しさを味わっていただくために、また、宇宙空間は無音なので、無音での上映を考えました。ただ無音で上映するだけでなく、より興味深く見ていたただけるよう、専門家に講演をお願いしたのです」

衛星画像の興味のきっかけに

そのためかイベント終了後は、多くの人が講演者のもとに集まり、質疑を繰り返していた。これを澤さんは「ブリッジ」と表現した。知識だけでもなく、感動だけでもない。両方がつながるからこそより深い興味になるという。芸術イベントのため衛星や衛星画像にについて知見がある人は少ないが、多くの人が興味を持ち講師のもとに質問に訪れた。

衛星画像は私たちの身近にあり、公開されているものも膨大にある。衛星画像を使ってどのようなことができるのか。衛星画像の可能性を感じることが出来るイベントだった。

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