(C)JAXA

イプシロン3号機打ち上げ成功
宇宙ビジネス大きく前進

2018年1月18日、ASNARO-2がイプシロン3号機で打ち上げられた。この打ち上げは、宇宙ビジネスにおいて、ふたつの大きな意味を持つ。

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  • 高性能小型衛星システムASNAROプロジェクトの2号機が打ち上げられた
  • 小型ロケットの国際競争力が試されるイプシロン
  • NECが宇宙データ利用サービス参入、小型衛星を中心とした宇宙ビジネスが加速

高性能小型衛星システム開発、ASNAROプロジェクト

ASNAROプロジェクトの正式名称は「Advanced Satellite with New system Architecture for Observation」。経済産業省の委託を受けて、日本電気株式会社(NEC)と一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構が担当する、国際競争力を持つ高性能小型衛星システムの研究開発プロジェクトだ。

小型衛星の分野では、アジア・アフリカ・南米諸国などで低価格の衛星を保有したいという要求が増え、低価格で調達可能な小型衛星の需要が急速に高まっている。ASNAROは、この世界的な小型衛星の需要の高まりに対応するために開発されている人工衛星のシリーズで、従来の地球観測衛星と比べて機能を限定することで、小型、軽量、低コスト、高分解能を両立させている。

今までは観測目的に応じて、衛星システム全体が最適となるように最初から衛星を設計する方式だったが、バス部の標準化を行うことで、ミッションが載せ替えられるセミオーダーの開発方式が採用され、短納期・低価格を実現可能としている。

ASNARO 先進的宇宙システム(一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構)

イプシロンロケットの国際競争力

今回の打ち上げが宇宙ビジネスにとって重要なポイントのひとつめは、イプシロンロケットだ。3号機は、イプシロンにとって初の受託衛星を載せた打ち上げとなる。

これまで日本のロケット開発は、現在開発中のh2も含めて、大型で非常に高性能なものを目指してきた。しかしその分開発コストも高くなり、打ち上げ費用も大きくなる。成功率はほぼ100%で世界でも稀な性能を誇るが、商業打ち上げという点ではコスト面で苦戦を強いられていたのも現実だ。

小型ロケットでの商業打ち上げで、有名なのは、欧州宇宙機関(ESA)が開発した低軌道用人工衛星打ち上げロケットVEGA(Vettore Europeo di Generazione Avanzata)だ。300kg程度から2,000kgまでの小型衛星を低軌道に打ち上げる、全長30メートル、外径3mほどの小型ロケットで、運用はアリアンスペース社が行う。

2012年にデビューして以来、多くの衛星を打ち上げ、昨年は2017年にはイスラエルやモロッコなどの地球観測衛星を軌道まで運んでいる。既に、VEGAはCタイプまで発表され、推進能力も改善されるなど、商業打ち上げロケットとして多くの実績を積んで順調にアップデートされている。

イプシロンは今後、JAXAが設計を行い、製造についてはIHIエアロスペース社に委託しコスト削減を図る。低コスト化とともに、打ち上げ回数を重ね、成功実績を積むことが、世界市場で信頼を得ることにつながり、商業打ち上げのカギとなる。

イプシロンロケット3号機。2017年1月18日、鹿児島県内之浦宇宙空間観測所より打ち上げられた

NECの宇宙利用サービス事業参入

ふたつめのポイントは、このプロジェクトを通してNECが衛星データ画像販売を行うことだ。

これまでNECは小惑星探査機「はやぶさ」など、JAXAの衛星を受託していたが、これまでは衛星の製造に留まっていたが、宇宙利用サービス事業に参入した。運用業務を行う「NEC衛星オペレーションセンター」を新設し、2018年4月から「Ground NEXTAR(グランドネクスター)」とよばれる地上システムパッケージを利用し、衛星システムの運用を開始する。

これでNECは衛星の製造から利用まで一貫した宇宙ソリューションを提供することになる。製造から利用まで行う事業者は、海外ではGoogle マップ に画像提供をしているデジタルグローブ社などが有名だが、日本では初となる。衛星運用やリモートセンシングデータの撮影と提供などの宇宙利用サービス事業を行い、社会ソリューション事業に活用したい考えだ。

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オペレーションセンターの内観。宇宙利用サービスへの「基地」となる。(C)NEC

(プレスリリース)NEC、宇宙利用サービス事業に参入 ~「NEC衛星オペレーションセンター」を新設~

宇宙ビジネスの加速

JAXAが小型衛星市場に目を向け、NECが画像販売に参入した。宇宙ビジネス市場、とりわけ小型衛星市場の需要拡大、そして衛星データ利用拡大の向きは、これからも加速していくだろう。これらを使ったサービス創出も、今後ますます増えていくに違いない。
小さなロケットの打ち上げだが、日本の宇宙ビジネス市場にとっては非常に大きなインパクトのあるものとなった。

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