欧州の地球観測データ
「コペルニクス」へのアクセス

衛星データの利活用が全世界で進んでいる。欧州の地球観測データプログラム「コペルニクス」は数多くのビジネスを生み出している。日本からの具体的なアクセス方法についてセミナーで紹介された。

この記事は、約12分で読めます。

記事のポイントを見る
  • 欧州の地球観測プログラム「コペルニクス」
  • オープン&フリーをポリシーに掲げ、全世界で利活用を促進している
  • より一般向けのプラットフォームを現在考案中だという

宇宙ビジネスの中で、最も注目されるのが衛星データの利活用だ。既に打上げている衛星で取得したデータを、今までは主に研究者が利用してきたが、無償で公開することによって、さらに多くのユーザが使えるようになった。今後はそれを利用して、より多くのデータサービス事業創出を叶えていきたいとするのが日本政府の考えだ。
では世界では、衛星データ活用はどのようにされているのだろうか。欧州では「コペルニクス・プロジェクト」として衛星「センチネル」を中心とした地球観測データの公開が行われている。それについての説明が2018年の2月に行われた。

コペルニクス・リレーネットワーク

コペルニクスとは、欧州連合(EU)による、全地球の環境監視と安全保障が目的の地球観測プログラムだ。衛星データだけではなく、地上での観測データも合わせてデータプラットフォームに置くことで、包括的に地球観測ができるようなプログラムとなっている。EUが行う宇宙施策のひとつだが、アクセスは全世界から可能だ。日本での衛星データ利用の波を受けて、今回、公式にコペルニクスについての概要説明とアクセス方法などについての講演が組まれた。

主催は、日欧産業協力センターと、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構。日欧産業協力センターは日欧間の産業のファシリテーター機関で、今年30周年を迎える。そして、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構は、衛星データ利用を進めることで産業創出を行う機能を持つ。この2団体は、2016年に「コペルニクス・リレーネットワーク」として正式にコペルニクスから認められ、広報を行っている。

コペルニクスプログラムの行う衛星利用促進は、広報の面でも特徴的だ。1つの広報機関が中心的に行うのではなく、その地域ごとに主体的にコペルニクスを活用する団体に認可を与え「リレーネットワーク」の一員として、その団体がコペルニクスの広報を行う。アジア地域では初めて、この2団体が共同で「リレーネットワーク」として活動している。

ヨーロッパにおける衛星データ利活用

EUの宇宙政策として挙げられるのは「ガリレオ」と「コペルニクス」だ。どちらも天文学者の名前を冠したプログラムで、ガリレオは測位システムプロジェクト、コペルニクスは地球観測プロジェクトだ。予算規模も大きい。宇宙プロジェクトへの投資額は、2012年~2020年までの7年間で、約120億ユーロある。日本円で約1.6兆円のこの予算を利用して、EUはこれらのプロジェクトを推進している。

駐日欧州連合代表部の、ゲルゲリ・アンタル・シュヨク氏は、コペルニクスの概要をこう説明する。

ゲルゲリ「コペルニクスプログラムは、1998年に「GMES」という名前で開始されました。正式名称はGlobal Monitoring for Environment and Security。その名前でわかる通り、環境と安全のためのグローバル・モニタリングを行う全地球観測プログラムです」

kiji_02(ゲルゲリ).JPG
駐日欧州連合代表部の、ゲルゲリ・アンタル・シュヨク氏。コペルニクスプログラムの概要についてわかりやすくまとめた

全地球の環境監視と安全保障が目的の地球観測プログラム

前述の通り、コペルニクスは衛星データと地上データが統合された地球観測プログラムだ。ひとつめは衛星「センチネル」の1号機から6号機までで取得された衛星データ、次に欧州宇宙機関(ESA)や欧州諸国が所有する衛星や民間企業の商業衛星のデータ、そして欧州環境機関(EEA)や欧州諸国が所有する地上センサ、 気象所、船舶、航空機等によって得られた観測データ。この3つが統合されたのがコペルニクスプログラムだ。
そしてこれらが、分野別に6つのサービス領域として展開されている。陸域監視・海域監視・大気監視・気候変動・安全保障だ。

データは無償公開されており、いわば公共のインフラとして機能している。監督しているのは欧州委員会の中心的存在である、成長総局だ。それほど地球観測データがもつ経済への貢献に期待し、力を入れていると言える。

コペルニクス概要.png
コペルニクスプログラムの活用による経済効果を示した図。農業におけるコスト削減や保険市場の活性化などさまざまな分野で活用されている(引用)copernicus_general_overview.pdf

コペルニクスへのアクセス

前述の6つのコペルニクスデータサービスは、そのデータそのもの以外に、付加価値プロダクトや分析モデルの入手も可能だ。具体的にどのようにアクセスできるのかについては、欧州在住の宇宙ビジネスコンサルタント佐藤龍一氏より説明があった。

ESAのデータプラットフォームとしては、以下の2点がある。
どちらも、検索・閲覧、可視化、ダウンロード、データ処理が可能でサポートも受けられるプラットフォームだ。

・Copernicus Open Access Hub (Sentinel Science Hub)
https://scihub.Copernicus.eu/dhus/#/home
一般に広く公開されているプラットフォーム。
どの場所のどのようなデータが欲しいのか、エリアとデータを指定することができる。

・Copernicus Space Component Data Access (CSCDA)
プラットフォームは存在するが、アクセスは研究機関や欧州のプロジェクトのみに限られている。

ESA以外にも、EUMETSAT(欧州気象衛星開発機構)の提供するプラットフォームもある。

・EUMETCast
Sentinelのデータに加え、気象衛星データを提供するプラットフォーム

・Copernicus Online Data Access(CODA)
現在整備中。FTP経由でデータをダウンロードできる。

コペルニクスの問題点

佐藤「ただし、これらのプラットフォームにも問題点があります」

佐藤氏が指摘する問題点とは、これらのプラットフォームは一般に公開されているものがあるとはいえ、学術研究者向けに作られたため専門的であることだ。そもそも、膨大なデータ量をダウンロードするのに時間がかかる上、一般ユーザはデータをダウンロードしても処理・分析するツールやソフトを持っていないことが多い。それは現在の日本の状況と非常に似ている。

この解決策として、欧州委員会は使用環境にフォーカスした新たなデータプラットフォーム事業を考案した。 コペルニクスの全データプロダクトを一つのプラットフォームに集めたものだ。このプラットフォーム、Data Access & Information Service(DIAS)は、クラウド型データプラットフォームで、自分のPCに膨大なデータをダウンロードする必要がない。そしてデータ処理や分析に必要なツールやソフトをあらかじめ搭載しており、よりユーザが使いやすい環境を整えている。これによりIT事業者と連携しやすくする開発環境が実現する。

(参考サイト)COPERNICUS DATA INFORMATION AND ACCESS SERVICE (DIAS)
https://www.eumetsat.int/website/home/DIAS/DIAS/index.html

データにアクセスすることで新規事業のアイデアを

前出のゲルゲリ氏は「欧州は宇宙セクタの上流には非常に強い」という。ロケットや衛星などのインフラのことだ。

ゲルゲリ「この強みを生かして、今後はダウンストリーム、ユーザ向けのアプリケーション開発を行っていく」

コペルニクスプログラムのポリシーは「オープン&フリー」だ。これは宇宙産業ビジョン2030で、日本政府も掲げている。ただ公開するのではなく、利用ユーザを想定して、より使ってもらいやすい環境を構築するかが、今後の利用促進のカギとなるのは間違いない。日欧ともに環境構築に急ぐのはこのためだ。

日本での事業創出は、その環境が整ったあとに、急速に広がる可能性がある。現時点から、少しずつ可能な部分からアクセスすることで新規事業展開のアドバンテージを狙うこともできる。
コペルニクス・インフォセッションは、2018年には数回ほど開催される予定だという。欧州が公開するデータプラットフォームに触れることが、新しいビジネスの可能性を考えるきっかけになるかもしれない。
開催予定は今後、日欧産業協力センター・一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構、そしてそれが運営する宇宙ビジネスコートのサイト上で掲載される。ぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。

本セッションにて発表された資料はこちらからご覧いただけます。
copernicus_general_overview.pdf
copernicus_data_platform_service.pdf

コペルニクス(公式サイト)
http://www.copernicus.eu/

宇宙ビジネスに関わる技術のサポートをします。衛星データのサンプルが欲しい・衛星データ活用技術を学びたい・製品の企画を聞いてほしい・衛星システムについて学びたい・講師を派遣してほしい まずはお気軽にご相談ください。宇宙ビジネスコート宇宙ビジネスに関わる技術のサポートをします。衛星データのサンプルが欲しい・衛星データ活用技術を学びたい・製品の企画を聞いてほしい・衛星システムについて学びたい・講師を派遣してほしい まずはお気軽にご相談ください。宇宙ビジネスコート

月に一度、宇宙開発や宇宙ビジネスに関する
最新ニュースをお届けします。

※宇宙ビジネスコートの無料会員登録フォームへリンクします。

Go to page top