市民が主体の衛星開発。新しい衛星カテゴリーの創出に向けた取り組み

時代はいよいよ市民が衛星を開発するフェーズを迎えた。日本を代表する2つの大きな市民衛星開発団体が衛星の出来栄えを競い合う「関ヶ原プロジェクト」が、始まる。

この記事は、約8分で読めます。

記事のポイントを見る
  • 市民が衛星を開発する時代が到来した
  • 打上げ対決「関ヶ原プロジェクト」東西の団体が技術力と盛り上がりを競う
  • 市民団体の活動が、さまざまな産業を巻き込み日本の宇宙産業の土台となる

一般市民が開発する人工衛星

「趣味は宇宙開発」。これは東京を中心に活動する「リーマンサットプロジェクト」のキャッチコピーだ。リーマンサットプロジェクトは、そのキャッチコピーの通り、サラリーマン中心となり個人の趣味の範疇で人工衛星の開発を楽しもうという団体である。

宇宙開発は、これまではインフラ構築の要素が強く、国家主導の大規模開発が行われてきた。
しかし、技術革新により、あらゆる部品が小型化し、高い性能を有するようになった。その技術の進歩については、かつての大型コンピュータが今やスマートフォンとして私たちの片手に収まり、誰もが手にするようになったことからもわかる。

衛星開発も同様の道を歩んでいる。衛星は、手軽に入手可能な民生部品を加工することで、作ることが可能になった。その流れで登場したのが「市民衛星開発団体」だ。

開発に関わるのは専門の技術者だけではなく、サラリーマン、学生、主婦など、本業を別に持つ人たちである。
宇宙開発のハードルは、市民が衛星開発を趣味で行えるまでに低くなっているのだ。

東西の市民団体が人工衛星を打上げ、盛り上がりや完成度を競い合う

市民衛星開発団体は、リーマンサットプロジェクトだけではない。大阪を拠点に活動している「ドリームサテライトプロジェクト」は、リーマンサットより1年早く創設され、世界初の国家や企業による支援を受けない民間の人工衛星開発・打上げを行う団体、として注目を集めている。

この2団体は、2018年にそれぞれの開発した衛星の打上げを行う。その打上げを機に発表されたのが「関ヶ原プロジェクト」だ。

関ヶ原プロジェクトの発表は、2018年4月18日、「ナレッジキャピタル大学校」にて行われた。

other.jpg

「ナレッジキャピタル大学校」は、新しい学びの場を提供する体験型イベントだ。平日の開催にも関わらず、子どもから大人まで幅広い年齢層の参加者が全国から集まった

団体紹介

table3.pngryman.jpg

リーマンサットプロジェクト ファウンダーの大谷 和敬さん(左)と代表理事の宮本 卓さん(右)

drs.jpg

ドリームサテライトプロジェクト プロジェクトリーダーの菊池 秀明さん(左)とプロジェクトマネージャーの大島 逸平さん(右)

どちらも市民が主体の団体で、「誰でも参加可能」ということに特徴を持つ。
活動資金も企業などに頼ることなく、メンバーによる出資や、クラウドファウンディングを利用して調達している。そのため団体活動の自由度が高く、衛星のミッションもメンバー間での話し合いで決めているという。

評価基準

本対決の評価基準は、「おもしろさ」「技術的力」「ビジョン」の3点。

おもしろさ

どちらが市民に好かれるか。
Web上で公開される一般投票にて「オモシロイ」市民衛星の勝敗が決定される。

技術力

試験や軌道投入後のミッション精度等、技術的観点でのミッションの達成度で勝敗が決まる。

ビジョン

どちらがより多くの共感を得られるビジョンを掲げられるか。
オーディエンス投票を行い勝敗が決まる。

この対決の事務局を務めるのは、宇宙ビジネスコートによるサポートもあり、2017年9月に誕生した日本初の宇宙商社であるSpace BD株式会社だ。

Space BDは、先日2億円の追加資金調達に成功し、世界中の企業に宇宙実験のプラットフォームを提供していることで有名な、米国ナノラックス社とMOU(相互連携に関する覚書)の締結を発表し、世間から注目を集めている。

IMG_2271.JPG

事務局として行司役を務める、Space BD代表取締役社長の永崎 将利さん
この対決に勝利した方の団体に、賞金として「300万円」をSpace BDが提供する

「市民衛星」という新たなカテゴリーの創出に向けて

「関ヶ原プロジェクト」は、これまでの衛星カテゴリーであった「科学衛星」、「商業衛星」、「軍事衛星」などの分類に新たな「市民衛星」のカテゴリーを加える取り組みでもある。

永崎「今ここにいる全員が宇宙開発に関わる『権利』があります」

かつて宇宙開発は、限られた研究機関や大手企業の開発者しか携わることができない狭き門、ある種の「特権」であった。
しかし、「小型」で「シンプル」な衛星が開発されるようになった結果、大学やベンチャー企業へ、ついには市民が宇宙開発に携われるまで、すそ野が広がった。

つまり、すべての市民に対して、宇宙開発に関わる「権利」が与えられたことになる。
誰にでも参加が可能な「市民衛星」創出の流れが、日本中に拡大していくことで、さらなるすそ野の広がりが期待できる。

リーマンサットの宮本 卓さんは、衛星の開発に携わるようになり、あることに気づいたという。

宮本「普段の生活や仕事で行っていることが、実は「衛星の開発にも役立つことがある」ということに気がつきました。今の仕事が、「次の衛星の開発にも活かせる」ということを考えると、自然とモチベーションが上がり、イキイキと仕事ができるようになります。」

市民衛星の開発に携わることで、日常と宇宙開発との接点が見つかり、今の生活をより満たされたものにすることができる。

それが、この活動の「一番の魅力」だという。

IMG_2636.JPG

「関ヶ原プロジェクト」の企画・運営メンバー。ここから「市民衛星」という新しいカテゴリーが世の中に広がっていくか。

「関ヶ原プロジェクト」の先にある社会貢献

今回の「関ヶ原プロジェクト」は、東京と大阪2団体のみの対決だ。

しかし、将来的には「市民衛星」を共通のプラットフォームとして各地に展開し、衛星開発のノウハウ提供や、広報支援を通して、この活動を共創する団体を増やしていくという。

「関ヶ原プロジェクト」をきっかけとして、市民が衛星開発を行う流れが日本中に広がることで、衛星開発数の底上げにつながる。

各地域で個性を生かしたオリジナリティの高い衛星が開発され、地元の地場産業と結びつくことで「地域活性化」への貢献が期待できる。
また、大人たちが宇宙開発に、イキイキと取り組む姿を見せることで子ども達が影響を受け、将来の夢として宇宙を目指すきっかけとなるかもしれない。

世界各国で、宇宙産業の成長が加速している。

その状況下で、日本の宇宙産業の競争力を高めていくには、宇宙開発のすそ野を広げ、正しい知識を身に着けられる環境を整備する必要があるだろう。
「市民衛星」という新たなカテゴリーを創出し、さまざまな地域や産業を巻き込んでいく彼らの取り組みが、市民の「宇宙開発の基盤」として、日本中に広がっていくことを期待したい。

月に一度、宇宙開発や宇宙ビジネスに関する
最新ニュースをお届けします。

※宇宙ビジネスコートの無料会員登録フォームへリンクします。

Go to page top