日欧協力で宇宙ビジネスを創る
日欧宇宙ビジネスウィーク(後編)

2017年9月、4日間に渡って開催されたイベント「宇宙ビジネスウィーク」。日欧の宇宙ビジネス施策や具体的事例を、そらこと編集部が取材した。後編は、北海道に場所を移し、北海道の宇宙開発の取り組みや、牧場での衛星データ利用など、地域レベルで活用されるサービス事例についてお送りする。

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  • 宇宙開発は、ロケットの打ち上げ、衛星の製作から利用へと転換を迎えている
  • 農業分野で衛星データの利活用サービスが進んでいる
  • 地上データと衛星データを組み合わせるなど、衛星データの可能性は広い

北海道はオーストリアほどある広大な面積を持つ土地だ。その中で、2017年夏、帯広大樹町ではインテーステラテクノロジズ株式会社(以下、インテーステラ)が民間初となるロケットを打上げた。また同じ十勝地方では農業の自動化を進めるなど、衛星データを利用した農作業の自動化、効率化を、経営者自身が率先して行う、非常に革新性の高い土地でもある。
宇宙ビジネスウィークは、その北海道に場所を移して続けられた。さらなる衛星データの利活用について登壇者と聴講者が活発に議論を交わす場面もあった。その様子をお届けする。

北海道の産業と宇宙開発の取り組み

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青木 誠雄氏(北海道経済部産業振興局科学技術振興局長)

日本国農産物の約14%を占める北海道。北海道経済部産業振興局科学技術振興局長の青木誠雄氏が、衛星データを利用した現状の取り組みと、これからの展望について語った。
青木「北海道は、衛星データの活用したビジネスを行うのに適した土地であると考えています。なぜなら、衛星データの活用が見込まれる農業というフィールドにおいて北海道は大きなアドバンテージを持っているからです」

青木氏の言うアドバンテージとは、国内の14パーセントを占める農産物の売上高、そして国内平均の20倍という広大な農地面積だ。土地が広大なため、衛星データと連携した機械化された農業を展開しやすい。実際に十勝管内では、衛星データの活用し、小麦の刈り取り時期予測について実用化を進めている。

もうひとつ、人材についても強みがあるという。
「札幌市にテクノパークというIT企業が集積している地域があり、衛星データの解析に必要なITの知識を持った人材が豊富に存在する」とし、加えて学術の分野でも、北海道大学の高橋教授が人工衛星の開発を行い、「DIWATA-1」を国際宇宙ステーションから放出して軌道に乗せたという実績や、同大学の斎藤教授が海水温のデータを活用して漁場予測を行っていることなどを紹介。北海道がいかに、土地・人材ともに衛星データ活用のフィールドとして魅力的かを解説した。

夏に打ち上げを行った民間ロケットのインターステラについても触れ「今後は、衛星データを使って経済あるいは社会を支えていくというのが我々の次のチャレンジだと考えている」と述べた。

北海道という広大な土地とパイオニア精神、宇宙ビジネスの先駆けになるという強い確信を持った講演だった。

宇宙産業と欧州の展望:欧州宇宙政策とコペルニクス

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ゲルゲイ・アンタル・シュヨク氏(駐日欧州連合代表部 通商部一等書記官)

宇宙ビジネスのインフラともいえる人工衛星。現在打ち上げられている人口衛星の1/3を所有している欧州は、世界トップクラスの宇宙インフラを持っているといえるだろう。そんな宇宙先進国である欧州は、今後どのような未来を描いているのだろうか。その未来戦略を「新宇宙戦略の4つの戦略的目標」と題し、以下のように説明が行われた。

1. 宇宙が社会や欧州経済にもたらす便益の最大化
ガリレオ計画やコペルニクス計画等が有する可能性を最大限に引き出し、もたらされる便益を最大限に引き出すこと。他の政策とも連携させること、新たなサービスやインフラを作っていくこと。

2. グローバルな競争力とイノベーションの強化
国際競争力を強化していくためには、今より多くの企業が必要。イノベーションを増やすため、スタートアップ企業に対して投資を促進すること。また、宇宙部門への投資支援について、欧州投資銀行や欧州投資基金と協議をしていくこと。

3. 宇宙利用における欧州の自立性の強化
欧州から宇宙へのアクセスの権利を確保すること。宇宙開発は、欧州の安全保障においても重要な役割を果たしており、安全保障としての衛星利用と商用の利用の間に相乗効果持たせること。

4. 国際面での立役者としての欧州の役割強化
欧州の役割を社会的にも、経済的にも強化していくこと。世界中の国々が、宇宙を長期的で持続可能な形で利用できるよう、国際的なルールや、グローバルガバナンスを支持していくこと。

ゲルゲイ「宇宙利用の促進には、産業の下流部分に生かすことが非常に重要です。情報を無料にして、誰にでも手に入れられる状態を維持していくことが重要であると考えています。」

欧州には衛星データをインフラとして構築し、さらにそれらが作るビジネスが社会インフラになるような相乗的な仕組みを作っていく姿勢が見て取れた。

G空間社会におけるデータの利活用

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柴崎亮介氏(東京大学 空間情報科学研究センター)

宇宙開発は、従来のように人工衛星をどのように運営するか、打ち上げるかという時代から、どのように得られたデータを生かすのかを考える時代変わってきているという意見が増えている。では、具体的にどのように実社会に生かすのか。そして現在、課題となっているのはどこなのだろうか。

柴崎「現在作られている地図の多くは、衛星画像を使用して作成されています。しかし、これからデータは、宇宙空間からのみ取得するのではなく、地上からもデータを取得していく必要があります」

柴崎氏は、地上からのデータ取得は、携帯電話・スマートフォンによるインターネット接続によって可能になったと言う。その位置情報を使って、非常に力を発揮した日本の事例がある。

柴崎「東日本大震災です。被災地のボランティアがWeb上で、どの場所にどんな物資が不足しているか、避難所の場所はどこなのか。車が通れる道はどこなのかなど、地図上に載せることで、支援を行う際に役に立つ情報に様変わりしました。」

震災があった日に鉄道がすべて停止し、自宅まで歩いて帰るという情報がリアルタイムで確認できた。これまで地理情報は政府が管理・提供するものだと考えられていたものだったが、ニッチな情報が民間側から集まることにより、有用なデータになることが明らかになったのだ。パブリックなデータとプライベートなデータの組み合わせは、非常に価値のある情報に変わるということが見えてきた。

しかし、課題もあるという。
柴崎「さまざまなところから発生するデジタルデータを管理、記録できていないところです。これらのデータを生かせる形で管理し、PDCAのサイクルを回していくことが今後の課題です」

技術の進歩がスマートフォンを生み、また地理空間情報のあり方も変わろうとしている。

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鎌形哲稔氏(国際航業株式会社)

日本の農場を取り巻く課題は、共通しているものが多い。たとえば土地が広すぎる、飛び地になっており管理の手が届かない、人手が足りないなどである。これらの課題を解決するのが衛星データだ。衛星データを使うことで、管理の効率化が可能になる。一方で、導入をしても活用する知識がなければ、必要なデータを取得できず、十分に活用されない例もあるという。生産者にも使えるサービスとは、いったいどのようなものだろうか。国際航業株式会社の鎌形哲稔氏が実例を合わせて説明をした

鎌形「国際航業株式会社では、地球観測データを活用して、放牧地診断サービスを提供しています。なぜ放牧場なのかというと、管理が難しく、上手く管理ができなかった時の影響が非常に大きいからです。
牧場の圃場は、管理が良ければ7~8年持ちます。しかし、管理ができていないと1年でダメになってしまうこともあり、農家さんの大きな負担となります。牛の餌となる草を品質の高い状態で育てることができるかが、牧場では非常に重要です。なぜなら、草の質が下がると乳量が下がり生産者を苦しめるからです。」

そこで草の色を見て、雑草と良い草を見分けられる衛星データ活用サービスを開発した。衛星データを渡すだけではなく、生産者が見てわかるような形にデータを加工している。地形データと組み合わせてどこに水たまりができやすいなどの情報もワンセットで提供しているという。
衛星データが広大な土地を管理する際の手段として有用なのは明白だが、サービスまで興すとなるとそのアプリケーションツールの使いやすさが求められてくる。

鎌形「このように、いかに生産者の視点で必要なデータを組み合わせ、アクションをしてもらうかを考えることが重要だと考えています」

宇宙ビジネスウィークを通して

宇宙ビジネスは、人工衛星の製作やロケットの打ち上げからデータの利活用への転換が着実に進んでいる。自治体が持つ既存データやベンチャー企業が持つ新技術、民間から集まった地上データと衛星データを組み合わせることにより、今まで見えてこなかった世界が見え始め、斬新なサービスを生み出すきっかけとなっている。

宇宙ビジネスウィークを通して、日本と欧州がより密に繋がり、インフラを強化し、実用レベルで事例の共有をしていくこと。集まったデータを使える形で蓄積していくことができれば、今まで無かった新しいサービスが次々と誕生するかもしれない。
震災がきっかけで、地上の情報に価値があることが分かったように、ふとしたきっかけで、宇宙データの価値が再発見される可能性もある。
そんな未来がすぐそこまで来ていることを予感させるイベントであった。

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