日欧協力で宇宙ビジネスを創る
日欧宇宙ビジネスウィーク(前編)

2017年9月、4日間に渡って開催されたイベント「宇宙ビジネスウィーク」。日欧の宇宙ビジネス施策や具体的事例を、そらこと編集部が取材した。前編では政府関係者からの施策提言を主にレポートする。

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  • 日欧協力関係の背景は、地理的経済的類似性
  • 宇宙は開発から利用へと完全にシフト
  • 日欧相互協力によりさらなるビジネス創造を目指す

2017年9月、東京と北海道にて、「日欧宇宙ビジネスウィーク」が開催された。
日欧宇宙ビジネスウィークとは、日欧産業協力センターと一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構が共同で開催した日本と欧州の宇宙関連企業の交流イベントである。
本イベントは、LINK&LAUNCHをテーマとして掲げ、日欧企業の繋がりを生み、宇宙関連セクターの事業拡大や宇宙データの活用の促進することを目的としている。
欧州は、宇宙関連予算が世界第2位。ESA主導で宇宙関連への投資からビジネス創造まで、積極的に行われている。
その欧州を代表して、宇宙ビジネスを生業としている企業幹部7名が本イベントに参加した。多くの政府関係者、有識者が施策に明言したセミナーの様子を「そらこと」編集部が、3編に渡りお送りする。

日本と欧州が宇宙ビジネスで協力する体制が構築

日本と欧州が宇宙ビジネスで協力関係を結ぶ理由とは何か。それについて、登壇したのは、日欧産業協力センターEU側事務局長のシルヴィウ・ジョラ氏と、一般財団法人宇宙システム利用推進機構の中畔弘晶氏だ。

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シルヴィウ・ジョラ(日欧産業協力センターEU側事務局長)

ジョラ「日本と欧州は、宇宙戦略において類似性が多く存在します。 現在の宇宙開発は、従来のようにロケットの製造や打ち上げだけではなく、衛星データを活用しより身近な課題を解決する方向にシフトしています。その結果、ビジネスとしても広いフィールドで宇宙が使われるようになってきました。」

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中畔弘晶氏(一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構理事長)

中畔氏「一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構は、日欧産業協力センターと共にコペルニクスリレーネットワーク協定が結ばれました。これにより、欧州の宇宙産業界と日本の宇宙産業界の橋渡しとして、一層のサポートをしていくことができるようになりました。」

コペルニクスリレーネットワークは、欧州の地球観測プログラム「コペルニクス」の広報機関だ。地球上、宇宙空間からの膨大な地球観測データを無償で配布するという欧州のプログラムの広報組織のアジア拠点が、日本に置かれることとなった。

技術的にも、政策的にも環境が整った今が宇宙ビジネスの転換期であるとし、サポートを強化していく方針であることを説明した。

ビッグデータ時代の新たな衛星データ利用

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靏田将範氏(経済産業省製造産業局宇宙産業室長)

宇宙ビジネスの流れが変わってきている。かつてはロケットや衛星の製造こそが宇宙ビジネスのメインだったが、衛星データ利活用にまで波及しているのが現状だ。衛星データは、ただの「画像」として使われるのではない。ビッグデータとして他産業のサービスに組み込まれて活用されはじめている。

靏田「今後も衛星データが、様々な産業と連携してサービス開発に貢献し、競争力の強化などへ貢献が期待されている。多くの情報と組み合わせ、ユーザーとの間を繋げるアプリケーションビジネスを育成していくことが、重要なのです」

靏田氏が引用するのは、「宇宙産業ビジョン2030」だ。2016年に内閣府から発表された政府指針であり、そこには今後の市場規模や政策について示されている。製造から利用へ。宇宙利用によるビジネスチャンスが今まさに広がろうとしている。

宇宙ビジネスにおける欧州の展望

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ゲルゲイ・アンタル・シュヨク氏(駐日欧州連合代表部通商部一等書記官)

年間70億ユーロもの宇宙関連予算を有する欧州は、宇宙予算規模で世界第2位を誇る。これまで宇宙インフラを強化するため、イグノス、ガリレオ、コペルニクスなど、既に多くの衛星を打ち上げている。そして今後10年の間に、30機の衛星打ち上げを行う計画も立っており、宇宙インフラにおいて世界屈指の競争力を持っている。

ゲルゲイ「欧州はかねてより人工衛星などのハード面には強みを持っていました。現在はそれに加えて、実用面により力を入れている最中です。今後は実用面での利用拡大のため、各産業の現場で働く方々と密にコミュニケーションを図っていきます」

さきほどの靍田氏と同様に、製造から利用へ、欧州も政策転換していることが伺える。「衛星データとビッグデータにはとても強いつながりがあり、宇宙産業はデジタル革命の肝ということができる」という点も同様だ。ビッグデータとしての衛星データをどのように利用するかがビジネス創造のカギとなりそうだ。

日欧産業協力センターの宇宙ビジネス分野への協力

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ファブリツィオ・ムーラ氏(日欧産業協力センター事務局次長)

日欧産業協力センターは日本と欧州においての産業協力の中核組織だ。センター事務局長のファブリツィオ・ムーラ氏が、日欧企業の宇宙ビジネス競争力を高め、発展させていくための取り組みについて紹介をした。

ファブリツィオ「日欧産業協力センターにとって重要なミッションは、日欧間の産業協力を推進すること。そして交流機会の促進や人材育成を通して、双方の産業界の競争力向上を図ることです。そのミッションを達成するために、情報収集や機会提供に力を注いでいます」

その上で、前述のコペルニクスリレーネットワークにも触れ「欧州のコペルニクス活用事例を共有・伝達することで、日本でも宇宙ビジネスのインフラとして活用を促進していく」とした。このような取り組みが、日欧間の連携を生み、世界に通用する宇宙産業の創出に繋がるのかもしれない。

日本における宇宙ビジネス推進を担う、宇宙ビジネスコート

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高山久信氏(一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構 宇宙ビジネスコーディネーター)

2016年11月に宇宙ビジネスの拡大を目指す「宇宙活動法」と商業衛星による画像の利用や管理を規制する「衛星リモートセンシング法」の2つが成立し、国として宇宙ビジネスをサポートしていくことが明らかになった。
また、日本初の宇宙ビジネスコンテスト「S-Booster」がスタートし、商業利用としての宇宙に注目が集まっている。
加えて、民間や第3セクターの動きも活発だ。中でも事業者に伴走し、技術支援や事業支援を行う宇宙ビジネスコートに注目が集まっている。宇宙ビジネスコートは、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構内で設立された宇宙ビジネス支援プラットフォームだ。そこでビジネスコーディネーターを担う高山久信氏はこう語る。

高山「宇宙ビジネスをサポートするという観点から、情報発信に始まり、事業のサポートまで行っています。宇宙ビジネスコートがコーポレートサイトとして窓口の役割を果たし、配下の2つのコンテンツが宇宙ビジネスコートを支えています。「そらこと」では、全国の宇宙ビジネスの取材記事や、欧州のコペルニクス計画などの事例などを掲載しています。「宇宙API」では、どこから衛星データを入手すれば良いのか分からないというご意見から、国内外の衛星データにアクセスができるポータルサイトを作りました。」

宇宙ビジネスコート事業の開始から、わずか1年の間に2社の事業立ち上げに貢献している。これまで宇宙に関わりのなかった企業からも問い合わせを受けるなど、日本の宇宙ビジネスを加速させるのが、宇宙ビジネスコートであることは間違いない。

中編では、有識者とイノベーターによる、衛星データ活用事例についての登壇の様子をレポートにてお送りする。

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