日欧協力で宇宙ビジネスを創る
日欧宇宙ビジネスウィーク(番外編~北海道企業視察~)

2017年9月、4日間に渡って開催されたイベント「宇宙ビジネスウィーク」。日欧の宇宙ビジネス施策や具体的事例を、そらこと編集部が取材した。本記事では、日欧宇宙ビジネスウィークに参加した欧州企業の代表が、北海道のロケット開発企業と、宇宙データを活用して農場を経営する農家の視察に同行した時の様子をレポートする。

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  • 欧州企業の代表が、北海道の宇宙関連企業の視察を行った
  • 民間でのロケット開発の現場や、衛星データを活用したスマート農業などを視察
  • これまでにない繋がりがビジネスを生む可能性も

欧州企業の代表者たちが北海道の現場を視察する

これまでは、東京、北海道の会議室内で衛星データの活用事例の登壇者、参加者と議論してきた。最終日となる本日は、現場の視察として北海道大樹町のロケット開発企業と、帯広市のスマート農業を展開する農場を訪問した。

欧州企業の代表一行は、衛星データの提供などを主なサービスとしており、ロケット開発現場や農業にデータが活用されている現場を見る機会がなく興味津々の様子であった。

連日のセミナーの疲れを微塵も感じさせず、早朝から札幌駅を出発し、最初の訪問先に向かった。

ロケット開発の裾野を広げる活動

最初に訪問したのは、北海道大樹町に本拠地を構えるインテーステラテクノロジズ株式会社(以下、インテーステラ)だ。2017年7月30日に、自社で開発をしたロケットの初号機の打ち上げは、世間から注目を浴びた。打ち上げから1ヵ月程経過しているにも関わらず、同社と欧州企業の関係者との交流というイベントに、多くの報道機関が集まった。

インターステラの金井氏が、同社の取り組みと、将来の目標について説明をした。

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欧州企業の代表に対して、会社の説明をする金井氏

金井「私たちは、民生部品を使って、小型ロケットの開発を行っています。7月に行った打ち上げでは、目標としていた地上100kmまでは到達することはできませんでしたが、他のミッションは成功し、貴重なデータを得ることができました。」

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ロケット開発をより開かれたものにすると熱く語る

電子部品の高性能化や、耐久性の向上に伴い、人工衛星の開発に従事する人口が増えている。

金井「ロケット開発は、これまで大手企業だけが開発を行い、打ち上げを行っていたため情報が閉ざされていた世界でした。私たちは、ロケット開発をもっと開かれた世界のものに変えていきたいと考えています。もっと多くの人にロケット開発の仕事に携われるような社会を作っていきたいですね。」

欧州企業の一行からは、欧州企業とパートナーシップを組むなら、どの分野でのサポートが必要か。資金調達の手段や競合企業に対する対策についてなど、多くの議論が交わされた。

最適化を目指し、新しい技術を積極的に取り入れる農場

次の訪問先は、帯広市内の農場だ。
見学させていただいた農場では、農地を増やしながら効率化を徹底し、利益率の高い農業経営を行っている。その効率化のひとつが、自動操舵(そうだ)システムを搭載したトラクターだ。衛星から得られた植生データをもとに、育成に合わせて効果的に肥料を与えたり、耕したりすることができるという。

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プログラムされたルートを走る自動操舵システムを搭載したトラクター

上記のトラクターに加え、倉庫内には多数の高機能農具や機械が並び、まるでどこかの研究所のようだ。

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農場の経営方針やスマート農業への取り組みについてレクチャーを受ける一行

自動化による効率化を推進することで、大きな農場をわずか4名での管理が可能となった。また、高価格帯の野菜を育てていることもあり、年間1億円を超える売り上げを誇る。同規模農場を持つ農家なら、5,000万円程度が平均だという。効率的に付加価値を生み出すことで倍の売り上げを上げているのだ。

欧州企業の視察団からは、なぜスマート農業(ロボット技術やICT技術を活用して実現する農業)を進めようと思ったのか、なぜ従来の方法とは別のやり方を変えることができたのか、などの質問が上がった。
農場経営者からは、常に最適な方法を求めていった結果、衛星データの活用と自動操舵運転が現在の規模では最適であるという結論になったという。

欧州関連企業の視察を通して

北海道の魅力は、広大なフィールドがあるだけでなく、挑戦していくという意識が非常に高い土地だ。「自分たちがロケットの裾野を広げる」と熱意をもって挑戦する企業や、「農場の環境に合わせて最適な方法を常に追い求める」という農家など、まさに今回の視察先がそれに当たる。

今回来日した欧州企業代表者の多くは、衛星データの提供サービスを行ういわゆる上流工程の事業者である。
そのため、ロケットの開発現場や農業従事者と直接話すことができる機会が少なく、非常に貴重であったと口を揃える。

今回の視察では、利用の現場を知ることで、利用者側にとって必要なサービスのアイデアの源になったはずだ。なにより、日本での視察を通して、彼らが今後、日本でサービス展開を行う際の、大きな一歩になったのではないだろうか。
本シンポジウムの副題は、「Link and Launch」(つなげて、ローンチする)だ。日本と欧州の企業が強みを持ちあう形でつながり、国の垣根を超えて新たな宇宙ビジネスが生まれるための第一歩が、この4日間に渡る「宇宙ビジネスウィーク」だ。基調講演から現場視察までを通してできた絆が、新たなビジネスに成長してくことを期待したい。

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