未来のエンターテインメントは
人の手で作る流れ星

小さな粒子を燃やして作る流れ星。高い技術でロマンチックを演出するエンターテインメントビジネス

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  • 人工衛星を開発するベンチャー企業、「ALE」
  • 人工衛星の中の粒子が大気で燃焼して流れ星になる仕組み
  • 2019年、初めての人工流れ星のショーを瀬戸内で行う

今から2年後の2019年、大きな一歩を踏み出そうとする企業が日本にある。世界で初めての人工流れ星を作る、株式会社ALEだ。世界でも類を見ないこのプロジェクトは現在まだ事業化に向けての一歩を踏み出したばかり。2019年に行われる人工流れ星第1号のイベントに向けて、代表取締役である岡島礼奈さんに、このプロジェクトを生み出したきっかけ、そしてこれから描く未来について伺った。

株会社ALEの事業は、日本だけでなく海外からも多くの注目を集めている。2016年には米国テキサス州オースティンで開催されているSXSWのTrade Show、欧州オーストリアの「アルスエレクトロニカ・フェスティバ ル2016」に出展し、現地では日本の技術力を活かした純度の高いエンターテインメント事業として多くの支援と評価を集めた。ナショナルジオグラフィックやCNNなどの海外メディアにも取り上げられている。

人工的に流れ星をつくるというアイデアは、岡島さんの学生時代に生まれた。東京大学で天文学を専攻していた大学生時代、2001年のしし座流星群、2002年のペルセウス流星群が観測された。岡島さんはしし座流星群を夜空に仰ぎ見たことで、その魅力に取りつかれた。そして「数センチ程度の粒子が大気の中で燃焼するとこで光を放つのであれば、人工的にもできるのでは?」そう考えたのがきっかけだ。
「アイデアとしては珍しいものではないんですよ」と岡島さんは笑う。しかし実現に至ったのは岡島さんが行動に移すヒトだったからだ。まず、民間で人工衛星を作っているベンチャー企業と共同研究という形でプロジェクトを進めた。2014年に実験が成功すると、技術者だけで小さな会社を立ち上げた。それが株式会社ALEだ。

人工流れ星の仕組みはこうだ。人工衛星に粒子を詰めたものを、ロケットで打ち上げる。ロケットに搭載するには多大な費用が掛かるので、打ち上げるには他の衛星などと一緒に打ち上げてもらう形だ。南極と北極の間を周る極軌道上に落とされた人工衛星は、秒速約8kmで地球1周をおよそ90分で周り続ける。そうして目的地上空を衛星が通過するタイミングで、地上からの制御を行い、流れ星のもととなる粒子をガスで噴射させる。衛星から押しだされた粒子が燃焼し、それが流れ星となり地上から楽しむことができる。
人工的に流れ星を作ることは原理的には難しくないように思えるが、道のりはたやすくはなかった。まず、運営に必要な資金調達に苦労をした。人工衛星一つの作成にも億単位の資金が必要だ。前例のない事業の実現性に対し、難色を示すベンチャーキャピタルも少なからずあった。しかし前例がないからこそ面白いと賛同する投資家も多く、事業の後押しをしてくれている。

技術的にも挑戦の連続だ。正確な流れ星の軌道を描くために必要な再現性の高い挙動や、正確な計算に基づいた精緻な粒子の射出。これらに特に細心の注意を払って開発を進めている。
資金や技術のほかにも、事業許可に向けた法務調整にも苦労をした。法人や研究機関など、分野や業界を超えたさまざまなパートナーと活動していくため、プロジェクトに対する時間感の違いなどのギャップを埋めるためのコミュニケーションも課題のひとつだ。
「そこが面白いところではあります」と岡島さんは前向きだ。「模索を続ける日々ではありますが、多くの分野のプロフェッショナルに関わっていただいているからこそ、たくさんのアイデアが出てきます。打ち上げるだけじゃなくてもっとどんな利用ができるかなど、一緒に考えていけるのは楽しいですね」

ALEは現在、「SHOOTING STAR challenge」というプロジェクトを進めている。広島・瀬戸内で人工流れ星を鑑賞するショーだ。2018年に打ち上げ、2019年にショーとして実施される。広島は岡島さんの出身地である中国地方。穏やかな海に小島が点在する日本らしい風景が広がる。風光明媚な土地に足を付け、人工流れ星を見上げるという、未来のエンターテインメントだ。

今後はエンターテインメントサービスとしてだけでなく、天文学研究分野への貢献のほか、宇宙ゴミの燃焼処理などの世界規模での課題解決に向けて、この事業を活用していくことを考えている。「人と人との出会いで事業が進んでいく」と岡島さんは言う。プロジェクトの魅力に引き込まれたさまざまな人たちが、集い、協力しあい、夢を実現する。公共性の高い民間の宇宙ビジネスこそが、株式会社ALEの描く未来だ。

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