運転支援・自動運転の実現に向けた
移動体測位の実証実験

準天頂衛星システムを使った高精度な測位で、自動走行を実現するベースの技術を広める

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  • 準天頂衛星はGPS衛星よりも高精度の位置情報取得が可能
  • 高精度位置情報を用いて車線認識のナビゲーションを開発
  • 将来の自動運転技術の実現にも貢献

高速道路や町中を自動運転の車が走る、そんな近未来映画や漫画で観たような光景が少しずつ近づいている。2010年、準天頂衛星「みちびき」が打ち上げられた。準天頂衛星システムは、日本の衛星測位(位置情報を計算してくれる)システムで、日本版GPSとも呼ばれることもある。みちびきが日本の真上から私たちを見守るようになって以来、準天頂衛星システムの利用実証はさまざまな分野のプロフェッショナルが研究を重ねてきている。
愛知県名古屋市に本社を構えるアイサンテクノロジー株式会社も、その研究を行ってきたプロフェッショナルのうちのひとつだ。今回は準天頂衛星の可能性と、同社の検証してきた車線認識ナビゲーションと、そのナビゲーション用地図の研究開発についてアイサンテクノロジー株式会社の担当者にお話を伺った。

アイサンテクノロジーは古くから測量業務系のソフトウェアを開発しており、先行して衛星測位の研究開発を進めてきた会社だ。一般財団法人衛星測位利用推進センター(SPAC)の依頼を受け、「みちびき」の利用実証にも早い段階から協力をしていた。その中で、同社は車などの移動体を使った準天頂衛星のサブメータ級(2~3メートル精度)測位補強の実証実験がまだ本格的に行われていなかったことに着目し、2013年より測位精度を確かめるための実験を行うことにした。
同社が行ったのは、衛星測位結果をもとに車線の位置を認識する簡易ナビゲーションアプリとそれに使用する道路数値化地図の開発だ。2~3メートル級の測位精度があれば、車の走行車線は高い確率で認識できるはずである。
同社は以前より位置情報解析についての知見があった。しかし、位置情報を反映する高精度地図を用意する必要があった。衛星測位の精度が高くとも、地図自体の精度が低ければ、反映したときに位置にズレが生じる。この二つが揃ってはじめて、位置情報を的確に知らせることができる。そこで同社は、所有している三菱電機の「モービルマッピングシステム(MMS)」を使用して高精度道路地図を作成することにした。GPS、レーザースキャナー、カメラなどの機器を車両に搭載したMMSを使用すれば、走行しながら道路の形状等を3次元の点群データ(物体の表面を計測した点の集合)として高精度且つ効率的に取得できる。MMSで得られた点群データを基に道路の白線データを抽出し、ナビゲーションアプリで使用する数値化地図を作成した。

市街地などでは、建物などによる信号の反射の影響で測位結果がずれる「マルチパス」という現象が発生する。上空が開けた郊外地ではマルチパスの影響は少なく、衛星測位の結果を地図に重ねると、実際の走行車線とほぼ一致する結果を得られたが、市街地は予想通りマルチパスの影響により、地図に重ねた結果と走行車線が一致しないどころか道路から外れてしまうケースも発生した。
この問題については、GPSや準天頂衛星だけではなくEUのGalileoなど、他の測位衛星を組み合わせて利用する「マルチGNSS」という技術を用いることなどで解決できると考えられている。捕捉できる衛星の数が増えれば、マルチパスの原因となる衛星のデータを排除しても十分な衛星数を確保できるので、マルチパスの影響を抑えた上で高精度に測位することが可能になる。
内閣府の科学技術政策「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」における課題の一つ「自動走行システム」の実現に向けた衛星測位情報活用に係る調査を同社は3年連続で受託している。そこではこの実験を発展させた形で、移動体におけるマルチGNSS及びさまざまな測位方法の精度を評価する実験を行っている。2018年には準天頂衛星システムが実用化され、24時間準天頂衛星が天頂近くに確保できる状態となり、市街地等の衛星捕捉条件の悪い箇所でも測位率が向上する。また、サブメータ級、センチメータ級測位補強信号を利用することにより、用途に適した測位精度を得られることが見込まれている。
アイサンテクノロジーは2013年の実験により準天頂衛星システムと道路数値化地図の有用性を確認することができたと話す。さらに、衛星測位を利用する際、測位結果を地図上に正確に反映させる技術が必要であるので、その技術を啓蒙していきたいとも語る。古くから測量業務を行ってきたノウハウがある同社は、衛星測位の座標と地図の座標を正しく合わせるための技術にも優れている。
「地図上での位置の整合性をとる、補正パラメータを提供するといった、自動走行を実現するためのベースの技術を広めていきたいですね。私たちの技術が自動走行やカーナビに活かされていくのを期待しています」
近い未来、自動走行やナビゲーションの正確さを普通に感じるような時代が訪れた時、そのベースを支えている技術は、同社が培ってきた技術なのかもしれない。

そらこと編集部

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